少年の剣
「Kyukuaaaaa――――!!」
「「「はぁっ!?」」」
勝利を確信していたマリエル達の前で、驚愕すべきことが起こった。
フォイエルディアの全身が、激しく燃え上がったのだ。
「熱ぁっ!?」
急激に上昇した熱に炙られたサノンは、咄嗟に攻撃から防御に切り替える。
振り上げた腕を眼前に添え盾とし、足で地面を叩くことで無理やり方向転換する。炎に舐められながらもなんとかフォイエルディアの脇を通り抜けていった。
「サノン!?」
「大丈夫ですか!?」
フォイエルディアの炎に驚きながらも、モカ達はサノンの安否を問う。
「――――大丈夫!ちょっと熱かったけど!」
姿勢を崩してゴロゴロと地面を転がるも、すぐさま姿勢を整えて臨戦態勢を取る。
炎に焙られたがほんの一瞬だったことが功を奏したのだろう、見た限り火傷などは見受けられず、体自体には問題はなさそうだ。
しかし、その表情は苦み走っていた。
決まったと思ったところにこれだ。
とんだ切り札を隠し持っていたものだ。
「まずいわね…………。」
比喩ではなく燃え盛るフォイエルディアを前に、マリエルは眉を顰める。
ただでさえ炎弾という厄介な攻撃手段を持っているのに、さらに厄介な防御手段まで持っていたのだ。
全身炎に包まれている現状、サノンにフォイエルディアを攻撃する手段はなくなったと見ていい。格闘戦を主体とするサノンでは、怪我を負わずにダメージを与えることが出来ない。
そして自分もまた、ダメージソースがほとんどなくなったこと理解する。
属性ルーンは、大体の場合強化もセットで付与される。
あれはただ炎を立ち上らせているだけではなく、文字通り炎の鎧なのだ。
「Kurrrrr――――!!」
「やばっ!?マリー!!」
切り札を切るしかないかとマリエルが思考を巡らせた瞬間、フォイエルディアが突如マリエル達の方へと向かって突進しだした。
自分への攻撃手段がなくなったサノン達よりも、ポムニットの魔法を脅威と見たのだ。
「
ポムニットが咄嗟に魔法を発動するも、先程の焼き廻しのように炎塊で迎撃されてしまう。
少しでも牽制になればと放たれたマリエルの矢も、悉く弾かれるか、運よく命中しても高熱に焙られすぐさま燃え落ちてしまう。
踵を返したサノンも全力で走るが間に合いそうにない。
「くっ――――!?」
防御と攻撃を同時に出来るなど、器用なヤツだと内心で毒づきながら弦を引き絞り、ルーンに力を籠める。
切り札を切る。その決意を固めたその時――――。
「Kugya!?」
フォイエルディアが足を縺れさせてこけた。
「「「…………え?」」」
ポカンとするマリエル達だったが、フォイエルディアの姿を見て何故彼が転んだのかを理解する。
フォイエルディアの足に、見覚えのある鎖が巻き付いていたのだ。
宙を自在に泳ぐ鎖がフォイエルディアの意識の外から絡めとり、転倒させていた。
身を横たえながら藻掻くフォイエルディア。拘束できる時間はそう長くはないだろうが、僅かながらも時間稼ぎができた。
モカとラテにとって、それだけあれば十分だった。
「モカ!」
「了解!」
ラテの合図に、モカは全力で駆けながら額のルーンに力を籠める。
その加速は今までの比ではない程に速く、マリエル達は一瞬モカの姿を見失った。
ルーンの輝きが最高潮に達したその瞬間、モカが叫んだ。
「『聖なるかな』!!」
「マジ!?」
サノンの口から無意識の内に言葉が零れる。
それほどまでに、目の前の光景は衝撃的だった。
近くで倒れ込むフォイエルディアの存在を忘れたように、マリエルとポムニットも驚愕に目を剥いている。
モカの剣が松明のように光り輝いていた。
鋭く、眩く、神々しい。
昼だというのにキラキラと周囲を照らすそれは、見ていると背筋を正さなくてはいけないと感じてしまうような高潔さを有していた。
いと高き剣。
物語の英雄が所持するもの。
それは正しく――――。
「――――聖剣。」
残光を尾のように伸ばしながらフォイエルディアに肉薄する。
炎が身体を炙っているというのにモカは何の痛痒も感じていない。
「はぁっ!!」
輝く剣が一閃。
空を斬るかのような軽さで振るわれたたった一太刀で、難敵であったフォイエルディアの首が宙を飛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます