お互いをよく知るために
◇………………………………………………………………………
「ダンジョン講義はここまでにして、本題に戻るわよ。」
厨房へ戻っていくリルルーラを見送っていたマリエルは、向き直ると話を続ける。
「私達の仕事は原因の調査および解決。
さて。モカ、先程の話と合わせて今回の件、原因として考えられるのはなにかしら?」
「原因……。」
突然の問いかけに、顎に指をあてて考え込む。
「話の流れからすると、マリーさんはダンジョンが原因だと考えてると思います。
そして被害範囲が変化、いえ移動しているとなると……、おそらく
「正解。」
「お~、モカ君すご~い。」
マリエルの言葉と共に、サノン達がパチパチと拍手を鳴らす。
「他の原因も可能性がない訳じゃないけど、状況を見るに今回のケースはまず間違いなく
当たっていたと胸を撫で下ろすモカの頭を撫でながら褒め称えるサノンにジト目を送りながら、マリエルは言葉を続ける。
「つまり、今私達がするべきはダンジョンを見つけ出すことよ。」
「ていってもさ~。あたし達もけっこー探してるけど、全然見つかんないじゃん?
この間のそれっぽい魔物も、結局ハズレだったし。」
「さ、散々追いかけたのに、唯のハグレでしたね。」
モカ達が出会った二日前の日。
彼女達がダンジョンの手掛かりを求めて村周辺を探索していた時、この辺りでは見かけない魔物を発見し、それが
「手掛かりなら見つかったわよ。」
骨折り損のくたびれ儲けだった先の探索に軽く消沈している二人に対して、マリエルはなんてことないようにあっさりと告げる。
「マジッ!?」
「ほ、本当ですか!?」
「そうなんですか?」
キョトンとするモカとは対照的に、サノンとポムニットは驚愕していた。
なにせこの仕事を受けて一週間余り、成果どころか手掛かり一つ見つけられなかったのだ。
「プレッシャーボアですね。」
「ええ、そうよ。」
そんな短い会話で分かり合っている二人とは違い、モカ達には理解できなかった。
「えっと、プレッシャーボアが手掛かりなんですか?」
「正確にはプレッシャーボアと遭遇した場所ね。」
「……湖が?」
モカもサノンもポムニットも、まったくついていけず、ちんぷんかんぷんだった。
「モカ、先程のダンジョンの話は憶えてますか。出入り口以外からの侵入が難しいという内容です。」
「流石に覚えてるよ。」
首を傾げるモカ達を楽し気に眺めていたラテからの突然の問いかけ。
いくら何でもつい数分前に聞いた内容を忘れる者はいない。
さっ、と目を逸らしたサノンを除いて。
「実はこれ、効果が弱まったり、なくなったりする状況が結構あるんですよ。
今回の場合は、おそらくダンジョンの接触ですね。」
「ダンジョンの……。」
「接触……?」
「通常ダンジョンというものは、他のダンジョンと重なり合って発生することはありません。隣り合っていてもそれぞれの外郭は交わらずに独立しています。
しかし、
「そうなると、侵入を抑止する効果が薄れて、外から魔物が入り込むことがあるの。」
「水浴びしている時に、妙に動物の気配を感じて調べに行ったんですが、湖もちゃんと村の範囲の中にありました。」
「つまり、ダンジョンはこのモント村のすぐ傍に来ているってことよ。」
マリエルは村の中でプレッシャーボアと遭遇したことで、町の外郭がおかしくなっていることに気が付いたのだ。
「てことは、この村が襲われる可能性が高いってことじゃないの?」
「そうよ。
だから明日からはこの村から大きく離れないように、周辺を探索していく予定よ。」
「それ村の人に教えないと大変なことにならない?」
「水浴びの後、あんた達に買い物任せている間に村付きの人達に伝えてあるから大丈夫よ。」
何時の間に、とサノンとポムニットはマリエルのそつのなさに頼もしさを覚える。マリエルが細々としたことを片付けてくれるので、彼女達は十全の力を発揮できるのだ。
無論、マリエルにおんぶにだっことならないように気を付けているが、いつも彼女はサノン達より先を考えて行動しているので追いつけないのだった。
「では明日は周辺を探索がてら、お互いの戦力確認を行いましょうか。」
「ええ、それでいきましょう。」
まだ知り合って然程時間も経っていない上、お互いがどういう戦闘スタイルなのかも把握していない。
共闘するにあたって最も重要な事柄だ。こればかりはいくら言葉を尽くしても伝わるものではないため、実際に動いてみる必要があった。
「私達の実力もしっかりと見せてあげるわ。」
ニッと笑うその表情は、ベテランらしい頼もしさがあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます