肌色全開の勇者
◇―――――――――――――――――――――――――――
「なんでこんなところにプレッシャーボアが!?ここはまだモント村の領域内のはずなのに!!」
「わからないよ!?とにかく走って!!もうすぐ湖だ、そこでなんとか撒こう!!」
走りながら怒鳴りつける様に言葉を交わす。
声量を気にするほどの余裕がないのだ。
サノン達はモント村に着くなり、真っ直ぐこの湖へと向かった。
昨日は丸一日汗を流すことが出来なかったので、うら若き女性としては一刻も早く水浴びしたかったのだ。
速足で歩く彼女達が湖へ続く小道に入った時、事件が起こった。
村の中という比較的危険の少ない場所だから、気が緩んでいたのだろう。
談笑しながら歩く彼女達は、草木の陰から飛び出してきた猪に気付くのが遅れてしまった。
その結果、猪の体当たりを躱しそこなったポムニットが吹き飛ばされて気を失ってしまったのだ。
この突然の事態にサノンとマリエルは大いに慌てた。
不幸中の幸いと言ったところか、ポムニットに大きな怪我は見受けられなかったが、すぐに意識が戻ることはなさそうだった。
マリエルは素早くポムニットを背負い、彼女達は必死に逃げ出した。
「厄介ねっ!」
マリエルが毒づく。
危機的状況を打破するいい案が浮かばないのだ。
ルーンはすでに全力で発動している。それでも、野山を駆ける獣との速度差を埋めるには至らなかった。
強襲を受けていさえいなければこんな猪二頭、楽勝とまではいかないものの、決して討伐できない存在ではない。
最初にポムニットが気絶してしまったのが痛かった。彼女が動けないからこそ、マリエルが背負わなければならず、戦力となれるのがサノンしかいなくなってしまったのだ。
サノン一人でも、時間をかければ猪二頭を退治することは出来る。
しかし二人を守りながらとなると話は別だ。サノンが一頭倒している間に、もう一頭にマリエル達が襲われてしまう。
それ故に、彼女達は逃げに徹するしかなかった。
「湖だ!」
茂みを掻き分けた瞬間、視界が開け、目の前にキラキラ輝く湖が見えた。
この湖周辺は遮蔽物が多い、それを利用して猪達を巻く作戦だった。
しかし、事態はさらに悪化する。
「――――キャアッ!」
「マリー!?」
湖が見えたことで僅かに気が緩んだのか、マリエルが足を滑らせ転んでしまったのだ。
サノンが悲鳴のような声色で名前を呼ぶ。
すぐ傍に危機が迫っていた。
「くっ――――!」
転んだ時の体勢が悪かったのか、足がしびれて上手く動かせない。避けるのは不可能だった。
咄嗟に矢を引き抜くが、弓を構える時間はなかった。
踵を返したサノンが必死に駆けるが間に合わない。
マリエルは、己の命を奪い来る脅威を最後まで諦めることなく睨みつけ、せめてポムニットだけは庇おうと抱きかかえる。
「マリィィィィ――――!!」
絶叫。そして――――。
「Bugyyyyyyyy――――!?」
「「――――え?」」
マリエル達の口から、呆然とした声が漏れた。
目の前で起こったことが、うまく認識できなかった。
今しがたマリエルの命を奪わんとしていた猪が血を流し、転び倒れ込んだのだ。
「大丈夫ですか?」
いつの間にか目の前に小さな背中が見えた。
小柄なはずなのに、やけに大きく見える背中だった。
そしてその背中の持ち主が、昨日出会った駆け出しの少年だということに気が付き――――。
「あ、あなた――――うぇ!?」
「んに”ゃ!?」
二人して変な声が出た。
危機的状況から救ってくれた恩人とも言える相手なのだが、その格好が問題だった。
現れたモカは――――全裸だった。
肌色一色の救世主に、ついつい視線が股間に向かってしまう。
遮る物が何もないのだから、当然丸見えだった。
「はぁぁぁっ――――!!」
衝撃的展開に混乱するサノン達を尻目に、モカは猪に飛び掛かった。
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