第13話
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一休みした二人は、巨狼の解体を始める。
全てを持っていくには、その身体はあまりにも巨大すぎた。故に冒険者が魔物を討伐した際は高く売れる部分だけを獲り、残りは捨てていくというのが常識だった。
本来、動物の解体はこんな何もないところで行うのとかなりの時間がかかるのだが、ルーンという超常の力を用いることで短時間で行うことを可能とさせていた。
手慣れた手つきで解体を進めていくと、ほどなくして作業が終了する。
「……こんなもんかな?」
「いいんじゃないでしょうか。」
「残りは捨てちゃうのか。もったいないなぁ。」
「仕方ないですよ。持っていくにも限界がありますし。」
汗を拭うモカの前には、解体された巨狼の部位が並べられている。素人の仕事にしては、なかなか綺麗な仕上がりと言えた。
獲れた素材は爪に牙、毛皮に少量の肉。残りは全て破棄していく。
いくら何でも二人と一頭の合計体重の倍以上ある巨狼を全て持っていくなど不可能だった。
ルーン持ちの魔物の肉体は、武器や防具の素材として価値がある。
毛皮はそれこそ使い道などいくらでもあり、肉は食用だ。肉食獣であるため臭みなどが強いが、香草などを使用して調理すれば食べられないものではない。
現に、この地方では狼肉はポピュラーな食材だ。
「これでよしっと。ラテ、終わったよ。…………何してるの?」
素材をバリーの背に括り付けたモカが振り返ると、ラテが何故か剥ぎ取り終えた巨狼に縄を括り付けていた。
「じゃあ、やりましょうか。」
「…………なにを?」
「何をじゃありませんよ。マナーについて習ったでしょう?」
「ん~?」
首を傾げるモカに、呆れた視線を向ける。
どうやら本当に理解していないようだ。
「ん~~~~…………あっ!」
「忘れてましたね?」
「いや!忘れてないよ!?
その…………ちょっと忘れてただけだよ!」
「……はぁ。」
言い訳にすらなっていない言葉に、思わずため息を漏らす。
モカは別段忘れっぽいわけではない。むしろ記憶力はいいほうだ。
しかし、旅の興奮と、命の掛かった戦闘でいろいろなことがスポンと抜け落ちてしまっていたようだ。
「街道などで魔物を倒した場合は?」
「剥ぎ取りが済んだら残りは街道から出来るだけ離れた場所に捨てる。」
「そうですね。では今回の場合は?」
「狼が出てきた林があるからそこに捨てる。
街道に放置してしまうと、周囲の動物や魔物が集まってきてしまうから、後から通る人に迷惑がかかる。
林の中に捨てれば、林や森は動物たちの縄張りだから、その中で処理されて街道に出てくる危険性が少ない。」
「その通り。よくできました。」
「えへへ……。」
「でも忘れてたことは先生にしっかり報告しますけど。」
「そんなぁ!?」
「まぁ、村に帰るのは、早くても一年以上は先になるでしょうから、先生に報告する失敗が増えないように頑張りましょう。」
「うぅ……。」
軽口を叩きながらも、手早く死体を林に放り込み、戦闘や解体で汚れた顔や体を拭う。
少し重くなった荷物と共に、二人と一頭の旅が再開した。
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