第46話: 王の寄り道


グラナディア王都まで、あと一日。


遠くに城壁が霞んで見える丘の上。


サイラスは地図を閉じた。


「……順調なら、日暮れ前には着く」


フェリックスが荷を担ぎ直す。


「やっとっすね……」


その後ろで。


「おお!!」


アルベルトが地面にしゃがみ込んでいた。


「見よ勇者よ!カエルじゃ!」


ぴょん、と跳ねる。


「そなたの経験値は……うむ、わからぬわ!わははは!」


サイラス、無言。


フェリックス、遠い目。


「……陛下。進みます」


「待て待て!この跳躍力!見事ではないか!」


「敵ではありません」


「そうか!ならば味方にしたいのう!」


カエル、逃げる。


アルベルト、追う。


フェリックスが呟く。


「これ、間に合うっすかね……」



街道に出る。


旅人たちとすれ違う。


王は止まる。


「おお!行商人よ!その干し肉、試食はないかね?」


「……金なら出す」


サイラスがため息をつく。


さらに進む。


今度は、道端で踊る旅芸人一座。


若い踊り子が軽やかに回る。


アルベルトの目が輝く。


「おおお!なんと麗しい!」


サイラスが即座に前に出る。


「陛下」


「少しだけじゃ!王として文化をだな――」


踊り子に向かって手を振る。


「そなた、名はなんという?」


踊り子、困惑。


フェリックスが小声で。


「ただのスケベじじいっすよ……」


「聞こえておるぞ!」


アルベルトは胸を張る。


「王たる者、民を愛さねばならぬ!」


「方向性が違います」


サイラスの即答。



夕暮れ。


城壁がはっきり見える位置まで来た。


アルベルトは満足そうに空を見上げる。


「外は良いなぁ」


ぽつり。


今度は、ふざけていない声だった。


「椅子に座っておるだけでは見えぬものがある」


サイラスは横目で見る。


「……急ぎます」


「わかっておる」


アルベルトは珍しく真顔になる。


「急がねばならぬ理由も、わかっておる」


風が吹く。


王都は、もうすぐ。


だが。


誰も知らない。


既に、アルカディウスの大司教、

レオニウスからの遣いが動いていることを。


盤面は静かに整っている。


そして――


アルベルトがふと立ち止まる。


遠くの空を見つめる。


「……嫌な予感がするのう」


サイラスも視線を上げる。


何もない空。


だが、確かに。


何かが、待っている。


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