第34話: 希望への第一歩



夜明け前。

城門がきしむ音だけがやけに大きく響いた。


戦争は終わったはずなのに、

彼らはまた“剣を持って外へ出る”。


誰に命じられたわけでもない。

正規の作戦でもない。

――それでも、全員の足取りは迷っていなかった。


ガロン・ソフィア組


先頭を歩くガロンの背中は相変わらずでかい。

その隣を、ソフィアが軽い足取りで並ぶ。


「ねぇ?ガロン」

「おう」


「平和になったってのにさぁあ、結局また走ってるよねぇ?あたしたち…」


ガロンは鼻で笑った。

「平和ってのはな、暇になることじゃねえ」


「出たw 哲学」


ソフィアは肩をすくめる。

「でもさ、昔は“守るため”だった。今は…取り戻すため、か」


「似てるようで違うな」

「うん。だからちょっと楽しいかも」


その言葉に、ガロンは何も言わなかった。

ただ、剣の位置を確かめるように触れただけだ。



ダンテ・ラミエル組


一方その少し後ろ。


「はぁ〜……まだ着かない?」

ダンテが大げさに伸びをする。


「はぁーあ?出たばっかりなのだ!そんなに経ってない!」

ラミエルが振り返って怒鳴る。


「ちゃんと歩いて! 真面目に!」


「いやぁ、真面目すぎると逆に疲れるんだよ人生は〜あぁーいやだいやだぁ」


「今は人生論じゃない!!おっとっと…」


ラミエルはぷりぷりしながら歩幅を広げる。

方翼のせいでバランスは相変わらず危なっかしいが、足は止まらない。


ダンテはその背中を見て、少しだけ声を落とした。

「……ほんと、無茶するねぇ?」


「無茶じゃない!」

即答だった。

「必要なことなのだ!」


その強さに、ダンテは一瞬だけ目を丸くする。

そして、いつもの軽い笑いに戻った。


「お?なのだなのだ調子戻った?w

   じゃあ俺は“必要な護衛役”ってことで」


「ちゃんと役に立って!…のだw」


「ふふ、それは保証できないなぁ」


「えぇーもー!違う人が良かったのだ…」


ラミエルはもう一度だけ振り返って、

ほんの一瞬、泣きそうな顔をした。


「……でも、ありがとう」


ダンテは何も言わず、親指を立てた。



フェリックス・サイラス組(後方)


最後尾。


フェリックスは重い荷を背負い直し、

何度目かわからない確認をしている。


「大丈夫っす、大丈夫っす……矢の本数、回復薬、工具……久しぶりだからねぇ…」


サイラスは静かに周囲を見渡していた。

足音、風、上空――すべてを。


「……来ない」


「え?」

「今のところ、追跡も監視も」


フェリックスはほっと息をつく。

「そっすか……でも、油断は禁物っすよね」


「あぁ」


それ以上、会話はなかった。

必要なことは、もう分かっている。



上空


雲の切れ間。

ヴァルキリーの連絡隊が、無言で旋回している。


戦うためではない。

見届けるために。



それぞれが、

それぞれの想いを抱えたまま。


誰も口にはしないが、全員が分かっている。


この先で何が起きても、

もう「平和だから」という言い訳は使えない。


それでも――

彼らは歩く。


アルカディウスへ。


奪われた王と、イーリス。

まだ目覚めぬザコの“時間”を取り戻すために。


夜が、ゆっくりと明けていった。



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