なんという理不尽。
心というのは薄い卵の殻に包まれているのでは? という弱さなのに、その殻が弱っていたり、すでに別の要因で無くなっていれば、ダイレクトに悪意の毒を浴びて大きな傷を負うもの。この作品は現実だからこそやりきれない負の連鎖の記録と、それでも家族の絆やお互いを思いやる愛で転がり落ちることなく踏み止まる姿が描かれています。
生々しい現実の出来事の記録は胸に迫るものがあり、起こってしまった出来事に対して一読者には成すすべがなく無力感に苛まれるのみですが、このような傷を作る側になってはいけないという決意の心も生まれてきます。
ノンフィクションかつ胸が苦しくなるような内容ですが、心の在り方や他者に対するリスペクトの大切さなど、改めて深く考えたくなる一作です。
夫が交通事故に遭ってしまったり、筆者様の父親が亡くなられたり。
辛いこと、理不尽なこと。生きている限り、どうしてもその身に降りかかることはあります。
そんな時も笑っていようなんて前向きなものでなく、率直に恨み言や苦しみも記されています。
そして、喪失を伴ったからこそ気づいた、幸せについても。
人生は辛いことばかりだから、この世の輪廻から逃れようという考えが、仏教だったりヒンドゥー教だったりの考え方だったように思います。
それはある意味では、事実のように感じます。
ただ、その辛さも、恨みも、嵐の如く暴れまわった後、いずれは収まることを、筆者様も知っている。
傷は消えないとしても、痛みは消える。
どんな理不尽に晒されても、死ぬまでは生きていく。
改めて、気づかされたように思います。