第12話 メレ
メレは、王都メダイユの西側にある渓谷で、風の魔石がとれる。
常に風が吹いているので、風の谷とも呼ばれメレは、風の魔石をゆっくりと採掘していたので、上から見ると階段状になっていて、魔法使いが多く住んでいる。
領主はシリウス・メレ・ノースウッド。薄い茶色の髪、青い瞳と儚げな容姿の魔法使いで王子様だった。
近頃、ノースウッドの竜殺しとめでたく結婚して、キトラとメレを二人で管理する事になった。
盛大にお祝いしたかったけど、領主様は今までにない地味婚をしたので、領民もひっそりとお祝いした。
シリウスは、風の魔石が採れるメレの領主になって、風の魔石にばかり頼ってはいけないと、魔法陣を描くのに必要な風の魔石に代わるものを探し、発見した。
それは、メレの地下水だった。
シリウスは風の魔石の採掘量を少し減らし、地下水をちょっとずつ売りに出した。
使う人間も、今までとほとんど同じ。
水が枯れないように、上層部で植林も始めた。ブルーベルという、風の吹く場所でよく育つ果木で、昔からメレで食べられていたものを植えて、上手く育ったら、売りに出すつもりらしい。
メレ全体で、話し合いをして、街全体で実験をしている感じだ。
「今日は、領主様方が見学に来られるんだよな?」
「そう聞いた」
シリウスは、領主になってからたまに見学に来る。
それが不正を防止しているのだから、たいしたものである。
リーン
柔らかい鈴の音が響く。
ふわりと人影があらわれる。黒いローブ、白いローブを着た人が二人。
シリウスの横に白いローブの背の高い青年がいる。赤茶色の髪、赤い瞳。竜殺しは冒険者と聞いたが、まるで騎士のようだ。
チラリと見える剣は黒、赤い魔石が印象的な魔剣。
シリウスとレオ二ードは、案内をしてくれる作業長に大人しく従っている。
貴族によくあるわがままとか、無茶振りがないのがありがたい。
途中で湧いた魔獣は、二人がなんでもないような顔で、しれっと倒していく。
護衛がいないから、変だなと感じたが、これなら護衛なんていらないだろう。
洞窟は、ダンジョンみたいで、きちんと冒険者ギルドもある。
採掘のための洞窟だが、魔獣が出るので、冒険者が来て魔獣を狩っている。
今、メレの採掘場は地下5階まである。歴史のある採掘場だが、5階までしかないのは、過去の住人が家を建てながら、掘り進んだ結果なのだ。
「面白い街だな」
「ねぇ、面白いよね」
坑道の中にも店や家がある。もう、掘り始めた時に建てることも考えるのだそうだ。
坑道が崩れるとか、思わないのかという質問に、坑道全てに魔法がかけてあると、作業長は笑う。
こうして、見学は順調に終わり、二人は作業員と作業長にお礼を言って、後日別に何かお礼の品を送ることにした。
シリウスの暮らしている屋敷も、少し変わっていた。玄関ホールの上の方に、羽根のついた物がくるくるまわっている。
「あれで、気温と湿度を調整してる」
「そんなこと出来たのか」
「うん。王城は、快適でしょう?」
言われてみれば、あの城で、寒いとか暑いとか思った事がない。
メレの屋敷も同じようにしたのだとシリウスは言う。
階段を登って、自室にいくと、シリウスはローブを壁に掛けた。
レオ二ードのローブを受け取って同じように掛ける。
本がたくさん置いてある。その他は紙とインク、石、何かの素材。
ベッド、机、イス、貴族のものとしては、小さなクローゼット。
こちらもやはり、風呂はいつでも入れる使用で、トイレと台所は綺麗だった。
そして、びっくりするくらい、人がいない。
「メレは長い間、領主がいなかったし、僕が人がいると安心出来なくて、一人で暮らしてたの」
そう言われると、シリウスの魔法は、一人暮らしに丁度良いものだと理解出来た。
家が綺麗になる魔法は、一人になりたいシリウスが、必要だから作ったのだから。
ついでに、メレの書類量も見せて貰った。キトラとあまり変わらない。
メレは、魔法使いと鉱夫が多く暮らしている。採掘する量、地下水の採取量を決めた量以上採らないようにして、仕事量を調整して、街を修理しながら、新しく作るを繰り返している不思議な街だとシリウスは話す。
「じゃあ、修理費は毎年組む感じか?」
「そう、今はね。前はよくない人が上にいたから、僕が来た時結構ギリギリだった」
本当によく今まで大丈夫だったなと、あきれたものだ。
「頑張ったんだな」
「うん。頑張った。ここ貰った時、マジで前任を始末しに行こうかと思ったけど、メレの人達に止められた」
とても、不満そうだ。
「我慢出来て偉いな」
レオ二ードは、シリウスにキスをした。
「そう?」
シリウスの耳が赤い。
「俺なら誰にも言わないで、こっそりとやる」
皆、魔法使いに調べられたらすぐにバレると思っているが、やり方があるのだ。
教えないけどな……。
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