第13話 メレの魔獣

 今日、メレの領主様が来た。

 一人は背の高い騎士のような、赤金のような髪の男。白いローブが嫌味なくらい似合っていた。

 あれが、一人でドラゴンを討伐した竜殺しのレオ二ード。

 確かに強そうだ。

 そして、もう一人。

 薄茶色の金髪にも見えるさらりとした髪、サファイアより綺麗な瞳。スラリとした手足。

 儚げな美しい顔。


「あの白い肌に、跡つけてえなあ。きっと、あの服のしたは、綺麗な身体があるんだぜ。

 組み敷いたらどんな声出すんだろうな!!いやぁ~、今度来たら相談するフリして、誘い出せねえかなぁ」


 男は別の街から来たばかりだった。

 酒を飲んで、隣にいた仲間にそう話す。初めて見たシリウスは、今まで見た事がないくらい、美しかった。

 男の人生で会った誰よりも綺麗だった。あんな綺麗な人なら、男でもいいと笑う。

「お前、本気で言ってる?」

「誰だって思うだろう?あれだけの美人、好きにしたいってさ」

 今ごろあの旦那に、ベッドの中で何されてんだろうなと、下品に笑う。


 店を出て、男はふらふらと歩く。

 今日も風が吹いて、男はよろめいた。夜のメレは風の中に魔獣がいる。

 落ちてくる物をなんでも食べる魔獣が、上から何か落ちて来ないかと、飛び回る。

 ナイトメアと呼ばれる魔獣は、メレの掃除屋と影で呼ばれていた。

 

「お前さ、うちの領主様を邪な目で見るの、やめてくんない?」

 シリウスは、崩れかけていたメレを蘇らせた恩人なのだ。

 誰もが、諦めた街の復興を私財を投じて成し遂げた。

 クズしか来なかったメレにやっと来たまともな領主様を、住人達は、大切にしているのだ。


「は?」


 男の身体が押された。

 落ちていく。

 その先に、メレの掃除屋ナイトメアが大きな口を開けていた。


「食われたか?」

 ぞろぞろと、家の中から人が出て来た。

「食われた」

「領主様に危害を加えるなんて許されない」

「本当に」

「ああいう奴は、消すに限る」

「まったくよね」

 住人達は、何も残っていないのを確認すると、家に帰った。


 メレの魔獣ナイトメアは、増えすぎも減りすぎもしない。

 夜しか出ず、落ちなければ何もしてこないので、討伐対象外になっている。

 理由は、それだけではない。

 ヘビのような身体に羽根のはえたナイトメアは、死骸になると皮だけ残して消える。

 その皮は、白く美しい。

 メレにしかいないし、役に立つからそのままにして、たまに落ちる皮を売ってメレの役に立てているのだ。

 

 翌日。

 何事もなかったように、役人たちは、転落事故の書類を1枚書いて、事故防止の案を添えて提出し、独り身だった男の家を片付けた。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る