第29話 珠音と三人組の日常

 今日の事務所は平和だ。案件の一つも無いので珠音が宿題をしていると、部長が話し掛けて来た。


「珠音ちゃん!俺、この二年で必殺技をマスターしたんだ」


 珠音は部長を一瞥した。


「で?」


「是非、見てくれ!」


 そう言うと部長はズボンをずらし始めた。


「行くぞ!」


 ダバダバと部長が、そのまま接近してくる。


 珠音は、一瞥すると宿題に戻った。


「フェイントを技まで……」


 珠音は頭だけ、振り返ると部長に告げた。


「まず、その薄汚い物を直して下さい。その上で焼却します」


 部長は言われた通りにすると土下座して謝った。


「すみませんでした!」


「時間は有限です。 始めましょうか」


 部長は逃げ出そうとした所、玄関でアリスとぶつかった。


「きゃあ!」


「アリスさん!助けて下さい!」


 どうにかアリスに事情を説明して助けを乞うが、珠音は非情にもアリスにリボルバーを持って来る様に命じる。


「良いですか?弾は六発中五発です」


「え?」


「私が、手を下すかリボルバーで自分の運に縋るか選んで下さい」


「どっちも死確定じゃ無いですか!?」


「では、どちらにしますか?」


 珠音を選べば確実死だ。しかしリボルバーも確率がおかしい。


「あの〜普通六発中一発じゃあ……」


「賭けには釣り合いが必要です」


 確かに釣り合いは取れて居る。だが両方選べば確実に死ぬ。


「人はよく勘違いをします」


 部長の顔は真っ青だ。


「自分の居る場所が安全だと……脆いとも知らず」


「この通りです!何卒、恩情を!」


 この部長の言葉にアリスも大人の対応で庇う。


「しかし、ミスは付き物です。ここはこちらが、大人に成って……」


「私にとっては洒落です」


 最終的に部長は腹を括ってリボルバーを選択した。


「……せめて最後に彼女が欲しかった!」


 カチッ!


「えぇ!やったよ俺!」


「最初から弾等入って居ません」


「え?」


「貴方は自分自身の勝手な思い込みで自分を追い詰めてただけです」


 珠音は一拍置くと……


「ですから洒落と言ったのです」


 部長が、膝から崩れ落ちる。


「……助かった」


「次はありません」


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