第25話 珠音の選択

 珠音マニュアルを受けて、珠音はある決断をした。


「この事務所での祓いは、ここで終わりにします」


 その言葉に事務所の全員が驚く。


「珠音さん、それはどういう?」


「言葉通りです」


 珠音の判断は世界からすれば、異物である事が判明した。今回の件を珠音は重く受け止めて居た。


「しかし『こちら』では、です」


「と言うと?」


「実家の方では続けます」


 その日から珠音は淡々と支度を始めた。


「珠音さん?この荷物は?」


「そこに、まとめといて下さい」


 その報を受け、珠子も緊急帰国して来た。


「珠音ちゃん!」


「はい」


「帰っちゃ嫌よ!」


「ここで続ける理由が、無くなりました」


 珠音マニュアルの存在を引き合いに出し珠子を説得する。


「そんなもん勝手にやらしとけば良いのよ!」


「勝手に出来る内は、問題に成りません」


 依頼として来た以上、協会は同じ間違いを、より静かに繰り返すだろう。


「ここでの役割は、終わりました」


 沈黙が包む。


 いざ珠音が出発の日、親しい人間だけが見送った。


 珠子。


 アリス。


 三人組。


 風巻母。


 風巻エリス。


 そして扉の向こうから珠美が迎えに来た。


「珠音〜」


「はい」


「本当に良いの?」


「迷う理由が、無くなっただけです」


 珠音は淡々として居る。


「珠音さん……」


 風巻エリスは顔をぐしゃぐしゃにしながら珠音に抱きつく。


 優しく撫でる珠音。


「……珠音ちゃん」


 珠子も何か言いたそうだが、敢えて黙る。


「向こうでも元気でね」


 三人組も見送る。


「まだ……決着はついてませんわ」


 風巻母は、また来いと要求する。


 そしてアリスがまとめた荷物を運び出す。


「それでは帰ります」


 珠音は最後まで淡々として居た。


 そして設定次第で何処にでも繋がるドアから帰って行った。


 そして二年の月日が流れた。


 三人組は事務所に就職した。


「もう普通の世界には戻れないからな」


「そうですね」


「無理無理」


 アリスは変わらずに家政婦をやって居る。


 珠子に関しては相変わらず『暴力の化身』として、災害級の祓いを行って居る。


 ふと、ドアが開いた。


「皆さん、お久しぶりです」


「えっ珠音ちゃん?」


「珠音ちゃんだ!」


 小学五年に成り成長した珠音が進学の都合上帰って来た。


「珠音ちゃ〜ん!」


 珠子が抱き締める。


「……珠姉様……背骨が折れます」


「あぁ!ごめんなさい!喜びの余り!」


「私が居ない状態で成立したなら、戻っても壊れません」


 珠音は確認する様に言うと……


「今回は、続けられそうです」


「おおー!」


「今度は役に立ちます!」


「僕も!」


 アリスは静かに「おかえりなさい」と答え荷物を運び出した。


 実は部屋は殆ど、そのままで最低限の荷物を持って帰っただけなのだ。


「おかえりなさい」


「ただいまです」







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