第21話 解決後

 処理が終わった後の現場は、いつも静かだ。

 灰原は煙草を出しかけて、珠音の前でやめた。


「……やり方は間違ってない」    


 珠音は振り向かない。


「でもな」    


 灰原は続ける。  


「人としては、ああいう言い方はしねぇ。残った方の心まで切り捨てる必要はなかった」

 

 少し間を置いて、珠音が答えた。


「必要でした」


「何でだ」


「迷いが残れば、また怪異を呼ぶ。今回の件、優しさは、再発の温床でした」

 

 灰原は眉を寄せる。


「割り切り過ぎだ。祓い屋は、結果だけ見りゃいい仕事じゃねぇ」


 その言葉に、珠音が初めてこちらを見る。


「祓い屋だからです」


「……何?」


「祓い屋は、人を救う職業ではありません。現象を終わらせる職業です」

 

 灰原は言葉を探すが、見つからない。


「貴方の言う人としての正しさは理解出来ます」


  一瞬の間が空いた。  


「ですが、それを優先した結果、次の犠牲者が出た場合、誰が責任を取るのですか」

 

 灰原は黙った。


「私は取りません。貴方も取らない。なら、最初から選ばない方が合理的です」


「……冷てぇな」


「冷たいのは現実です」


 珠音はそう言って、視線を戻した。


「正しさは、ここでは機能しません」

 

 灰原は苦笑した。


「やっぱりな」


「何がですか」


「関わり過ぎると、ロクな目に遭わねぇタイプだ」


「それは光栄です」

 

 珠音は、少しも誇らしげではなかった。

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