第19話 残された者
最近、死に別れた恋人が現れるから相談に乗って欲しいという依頼が来た。電話口の声は震えていて、言葉の端々に疲労が滲んでいる。珠音は短く要件を確認すると、その人物を事務所へ呼んだ。
現れた依頼人の背後には、薄く影が重なっていた。人の形をしているが、輪郭は曖昧で、冷たい気配だけがはっきりしている。珠音は一目で理解した。恋人は未練ではなく、完全に呪いへと変質している。
「このままだと、貴方死にます」
端的な宣告に、依頼人の顔色が変わる。
「そんな……何とかして下さい!」
懇願する声に迷いはなかった。珠音は静かに頷き、呪いに手を伸ばす。短い呪文と共に空気が張り詰め、影は抵抗するように揺れたが、やがて霧が晴れるように消えていった。事務所の温度が、ゆっくりと元に戻る。
助かったはずの依頼人は、その場に立ち尽くしていた。安堵よりも先に、喪失が押し寄せてきたようだった。
「でも、また会えたのは嬉しかったかな……」
かすかな笑みは、どこか危うい。三人組は視線を交わし、小さく息を吐く。
「あの人、今度は自分から呼び出しかねませんか?」
率直な言葉が、静かな部屋に落ちた。アリスは一瞬、珠音を見る。判断を委ねるような視線だった。
珠音は答えない。ただ依頼人の背を見つめていた。その沈黙だけが、残された者の時間の重さを語っていた。
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