第14話 心霊スポット

 今回の依頼は、心霊スポットに行ってから幽霊を見るようになったので、お祓いして欲しいという俗な内容だった。書類を一読した部長は肩をすくめる。


「また、ありがちな依頼ですね」


 湯気の立つお茶を珠音の前に置きながら言う。


「……」


「珠音ちゃん?」


 珠音は返事をせず、紙面を見つめたまま静かに考えていた。何か引っかかるものがあった。


 とりあえず依頼主と会うことにした珠音は、部長と共に指定の場所へ向かう。落ち着きのない様子の依頼主は、二人を見るなり早口でまくし立てた。


「夜に成ると赤い服の女が!」


「完璧、案件ですね」


 部長は軽く頷くが、珠音は黙ったまま依頼主を見据えている。その視線に気圧されたのか、依頼主は言葉を切った。


 ふと、珠音が口を開く。


「何回目ですか?」


 依頼主は悪びれもせず、心霊スポットに行く度だと答えた。


「では、何時もはどうしてるのですか?」


 知り合いの神主に頼んでいる、と続ける。その瞬間、珠音が静かに立ち上がった。


「申し訳ありませんが今回の依頼は無かった事に……」


「そんな!神主にも祓えないって言われたんですよ!」


「でしょうね。貴方が祓えたと思って居る幽霊……この場合は因果と言うべきですか……祓えてませんよ」


「どういう事ですか!」


「糸が絡まって居る……それだけです」


 自ら踏み込み、絡め取られているだけだという指摘だった。依頼主は追い縋ろうとして言葉に詰まる。そして、珠音は背を向けた。


「何で助け無かったんですか?」


 帰り道、部長が小さく問う。


「助けると癖になるだけです」


 珠音の声は淡々としていた。救いが常に正解とは限らないと示すように。

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