第11話 風巻母、再び
風巻家のリビング。テーブルを挟んで、珠音と風巻母が向かい合っていた。
「ゲームをしましょうか、珠音ちゃん」
風巻母は笑っている。
だが、遊びではない目だった。
「ルールは簡単よ。質問は交互。答えは『はい』か『いいえ』だけ。三回、答えられずに黙った方が負け」
「質問以外、喋ってはいけませんか」
「ええ。逃げ道は無し」
珠音は頷いた。
「では、私から」
空気が張り付いた。
「あなたは、今このゲームに勝てると思っていますか?」
一瞬、風巻母の指が止まる。
「……はい」
珠音はこれ以上、何も言わない。 次の番だ。
「珠音ちゃん。あなたは、この勝負で負ける可能性を考えていますか?」
「はい」
即答だった。風巻母の眉が、わずかに動く。
「では……あなたは今、正直に答えていると断言できますか?」
沈黙。
一秒。
二秒。
「……いいえ」
風巻母は気付く。この子は勝ちに行っていない。盤面を壊しに来ている。
「次は私ね」
風巻母は、わざと優しい声で言う。
「珠音ちゃん。あなたは、私があなたより頭が良いと思いますか?」
「いいえ」
「理由は?」
「質問は、『はい』か『いいえ』だけです」
「質問は、『はい』か『いいえ』……貴女の許す範囲で答えるのはルールに反する行為かしら?」
確認からの一回目の沈黙。
珠音は視線を逸らさない。
「次。あなたは今、考え過ぎていますか?」
二秒。
三秒。
二回目。
風巻母は、ゆっくり息を吐いた。
「……はい」
その瞬間、珠音は言った。
「では最後です」
声は低く、淡々としていた。
「あなたは今、負けたら困ると思っていますか?」
沈黙。
三回目。
風巻母は、笑った。
「……いいえ」
「終了です」
珠音は立ち上がる。
「ゲームは終了です」
「どうして?」
「困らないと言った時点で、あなたは勝ち負けより、自分を守る選択をしました」
風巻母は、しばらく黙ってから言った。
「……相変わらずね」
「そうですか?」
その背中を見ながら、風巻母は思う。
(負けてもいい、とは言っていないわ)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます