第9話 授業参観

 今日は授業参観日だ。


「今日は大丈夫でしょうか?」

 

 一連の騒動を知って居るエリスが、不安そうに聞いて来る。


「状況次第です」

 

 珠音は答えた。

 

 授業内容よりも、教室の後ろに並ぶ大人の視線の方が気に成っていた。今日は珠子では無く、アリスが来て居る。


「今日は思いやりについて考えましょう」


 担任の言葉に、保護者席が僅かにざわつく。


「では、誰か意見を」


 珠音は手を挙げた。


「立場の弱い者を、継続して守る事です」


「例えば?」


「昨日困っていた人が、今日も同じ理由で困らない様にする事です」


 後方で咳払いが一つ。

 

 例の保護者だった。


「思いやりって、まず謝る事じゃないんですか?」


 珠音は振り返らずに答える。


「確認します。謝る必要が無い人が謝る事は、誰の為に成りますか?」


「空気を良くする為よ!」


「空気は、責任を取りません」


 教室が静まり返った。


「では質問を変えます」


 珠音は淡々と続ける。


「謝罪によって事実が歪められた場合、その結果に責任を持つのは誰ですか?」

 

 担任は答えない。


「誰も持たないのであれば、それは思いやりでは無く、処理だと思います」

 

 沈黙が包む。


「正論だな」


 後ろから、風巻父の低い声がした。


「……今日はここまで!」


 担任は授業を打ち切った。


 放課後。


「今日は何にしますか?」


「ハンバーグが良いです」


 アリスと夕飯の話をしながら帰路に就く。

 

 翌日、保護者の間では問題に成って居たらしい。

 

 しかし、珠音は給食のプリンを楽しみに、いつも通り登校した。






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毎週、火曜、土曜、20時更新です。

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