第6話 善意の代償

 剛力事務所に、また怪異の依頼が来た。


 事務所では三人組が珠音から指示を受けて居た。この三人組は珠子が採用した大学生の雑用で、それぞれ『部長』『アッキー』『ブータン』と言う。


 今回は『事故を止める幽霊』を調べて欲しいと言う話だ。


 三人組と現場に向かう珠音は考えて居た。


 四人が通ると、何処からか声がする。


『危ないですよ』


「うわ出た!」


「でも普通に注意だよ?」


 珠音は炎を滾らせる。


「えっ?ちょっと珠音ちゃん?」


「責任の無い善意が一番質が悪いですから」


 そう言うと幽霊を滅した。


「ちょっと、どういう事!?」


「確かに、ここでは事故が減りました……しかし、他の所で事故が増えてます」


 実際、幽霊が注意を促していたのは、この一点だけだ。

 

 人の注意力は有限で、助かった分だけ、別の場所で油断が生まれる。

 

 事故は消えたのではない。

 

 押し付けられ、移動しただけだ。交差点以外では事故が寧ろ増えて居るのだ。


「正しい事が正解とは限りません」


「それでも、止めた方が良かったんじゃ……」


 幽霊が消えた後、この交差点での事故は増えた。だが同時に、他の場所では減少している。全体として見れば、均されたに過ぎない。

 

 珠音は視線を逸らさず、静かに言い切った。


「私は、この判断を間違いとは思いません」

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