第4話 お使い

 今日はアリスに頼まれて、お使いに来ている。事務所の雑務は基本的に彼女が回しているが、手が離せないらしい。珠音はメモを片手に、眠そうな目のまま商店街へ向かった。


 先ずは八百屋さん。大根を注文した所、店主が妙に緊張した顔で珠音を見る。


(この子……目が据わってる……一体、どれだけの修羅場を……)


 無言で見つめ返され、八百屋は慌てて新鮮な大根を選び始めた。珠音に急かされて、ようやく我に帰る。昔はワルだったらしいが、妙な迫力に当てられていた。


 だが、珠音は眠いだけだった。昨夜の書類整理が長引いたせいで、頭が半分夢の中にある。


 次はスーパーだった。適当に買い物かごへ商品を入れていると、試食のコーナーへと出る。香ばしい匂いに足が止まった。


 出されるトレイから珠音が何時もの手付きでピッと取ると、試食係のオバチャンが目を丸くする。


(この子……まるでビュッフェでも楽しむ様に……)


 単に普段からトランプのイカサマを鍛えた手付きなだけだった。珠音は味を確かめると、静かに頷いて同じ商品をかごに入れる。


 最後は面倒だった。駅前で新興宗教の勧誘に捕まる。


「……ですから、神はこう言いました」


「神の言葉を語るなら、貴女はもう神です。安心して下さい」


(私が神……)


 勧誘の女性は混乱した顔で立ち尽くし、珠音はその隙にその場を離れた。深く考えるのも億劫だった。


 お使いから帰るとアリスが出迎えた。


「珠音さん、すみません」


「にゃんだら〜」


 袋を渡しながら短く返す。今日は平和な一日だった。怪異が一体も居なかったからだ。

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