たらればは、もういい
翌朝、僕は旅に出た。一人じゃない。ガルドが片腕で盾を構え、セリアが静かに杖を握る。
そして僕は、相変わらず中途半端な魔法を準備しながら。
道中、ガルドがぽつりと言った。
「なあ、リエル。
本当に、もう恨んでないのか?」
僕は空を見上げた。
「魔王が倒れた今になって恨むほど、強く思ってなかったんです。
ただ……少し、寂しかった。
それだけ」
セリアが、そっと隣を歩きながら呟いた。
「レオンが、最後に言ったの。
『リエルがいれば……』って」
僕は足を止めた。
「……へえ」
風が、髪を揺らした。
「たらればは、もういいんですよ」
ガルドが苦笑する。
「そうだな。これからは、前を見ようぜ」
セリアが、優しく微笑んだ。
初めて見る、穏やかな笑顔だった。僕は杖を握り直した。
中途半端な魔法戦士の、新しい旅が始まる。
どこか遠くで、レオンの声が聞こえた気がした。
「お前がいれば……な」
僕は小さく答えた。
「もう、遅いですよ」
でも、心の中でだけ。
――ありがとう、レオン。
――そして、ごめんね。
魔法戦士は中途半端だといわれて追放された僕が魔王と相討ちになった勇者の語り部になった件〜僕が居れば生き残っていたかどうかはたらればになるのでもう遅い〜 月天下の旅人 @gettenka
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