贖罪と、残された棘

その夜、僕は二人に全てを話した。追放された日の冷たい風。

村を転々として飢えをしのいだ日々。

語り部として生きることを選んだ理由。そして、一番大事なこと。

「僕は、もう恨んでいません」ガルドが、片腕でテーブルを叩いた。

「嘘だろ……!

俺たちはお前を捨てたんだぞ!

レオンが死んだのは……俺たちのせいだ!」

セリアが首を振る。

「違う……私のせいよ。

私がもっと強く反対していれば。

私が、レオンに『リエルが必要だ』って言えていれば……」

僕は小さく息をついた。

「レオンは、僕を切ることで自分の理想のパーティーを目指した。

それが間違っていたかどうかは、もうわからない。

『恨んでいなかった』といえば、嘘になる。

でも、彼は最後まで魔王と向き合った。

それだけは、認めてあげたい」

ガルドが立ち上がった。

「なら、俺が贖罪する。

これから、お前を支える。

片腕でも、盾は持てる」

セリアも、ゆっくり立ち上がった。

「……私も。

もう、逃げない」

僕は少しだけ笑った。

「勝手に決めないでくださいよ。

僕は一人で十分――」

でも、言葉の途中で、セリアが僕の手を握った。

冷たくて、震えていた。

「お願い……置いていかないで」

その瞬間、胸の奥の小さな棘が、ほんの少しだけ疼いた。


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