第2話 コンテスト開幕! 俺だけ地獄を見る編集部 💥📚

「ポリ助さん、頑張ってください……」

「俺らは距離を取らせてもらいます。会社に評価されないんで」

「従業員用の相談窓口ありますから、俺に聞かないでくださいね!」


 同僚たちは、吸い込まれるように後ずさっていった。

 いや、後ずさりというより “俺を中心に半径3メートルの安全地帯を確保しながら逃げていく” という表現のほうが正しい。


 ひどい。これはひどい。

 俺、なんか “投薬実験直前のマウス” みたいな扱いを受けてないか?


 そんな中、編集長だけが満面の笑みで俺の肩をバシバシ叩いてくる。

 痛い。物理的にも精神的にも痛い。


「ポリ助君。これでバツヨム編集部は次の時代に進む。君はその“最初の一手”を担うんだ。誇りに思え」


「“最初の一手”って……将棋の『歩』じゃないですか。それ、初手で取られるタイプの」


「『歩』はな、最初に犠牲になることが多いんだよ!」


「だからフォローになってないですよ編集長!!」


 編集部に笑いが起きたが、それは応援の笑いではない。

 “あー、ポリ助、完全に巻き込まれたな” という、あの生ぬるい笑いだ。


「AIの文句は俺に言え」


「いや、それはもう聞いたっす」


 俺のツッコミを、AI禁止郎は見事にスルーした。

 そして、なぜか拳を天へ突き上げ――


「生成AIの利用ガイドラインを制定――あたぁっ!!」


 ……いや、なんで虚空殴った?

 この人、いつも誰と戦ってるんだ?


「AI生成禁止ッ! 最終成果物を生成AIだけで作ることは禁止ッ!」


 まるで必殺技の詠唱だ。

 編集長も負けじと声を上げる。


「原稿の下書きには使うのはいいが、最終的には人間が編集して整える。著作権リスクのチェックも強化する。“使うけど丸投げはしない”が主流だ!」


 ――いや、俺に言われても困るんですけど。

 ――むしろ投稿数増やしたいから、最近ガイドラインゆるくしてません??


 実際、投稿サイト自身が文章校正サービスを提供していたりする。

 AI補助で執筆のハードルが下がるから、投稿数は右肩上がりだ。

 作品の数が、投稿サイトの戦闘力だと思っているのだろうか?


「やるか」


 編集長が低くつぶやいた。


「やるって、何をっすか?」


 その質問に、編集長は完全に悪役の顔で言った。


「コンテストだよ。アプリの性能を試す。市場の話題作りにもなる」


 絶対ろくなことにならない。

 というか、どう考えてもその負荷は俺に来る。


 ――何言ってんの、この人?


 俺の視線に気づいたのか、編集長は妙に優しい声で続けた。


「ポリ助君、これは会社の生存戦略なんだよ。本当は俺も怖いんだ」


 そう言われても、俺には「はぁ」と溜息しか出ない。

 こうして俺は、晴れて“手書きスキャナーの奴隷” として働くことになったのだった。

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