祝賀寺ポリ助の編集地獄 ~禁断の手書きスキャナー騒動!? 手書き判定サバイバル!~
神霊刃シン
カクヨムコンテスト11【短編】
お題フェス「手」
第1話 手書きスキャナー地獄の幕開け 🖐🏻📱
俺の名前は
配属されたばかりのバツヨム編集部では、今日も当然のように “新人=何でも屋” の扱いを受け働いている。
ついさっきまで、受賞取り消し作家への “お祝いメール(?)” を大量に処理するという、精神にダメージしか残らない作業を延々こなしていた。
ようやく地獄のメール地帯から抜け出し、「今度こそ編集らしい仕事が来るはずだ」と淡い期待を抱いた、その瞬間だった。
ドンッ。
目の前にノートパソコンが置かれた。
(誰だか知らんが、精密機器だぞ。そんな扱い方しちゃダメだろ……)
画面には、バツヨムのライブ投稿モニター。
真っ黒な背景に、新作タイトルが光の粒みたいに次々と流れ込んでくる。
ぱっと見はサイバーでカッコいいが、編集側からすると完全に “投稿の滝”。
美しいのは見た目だけで、実態は精神を削り取るタイプの地獄だ。
「投稿されている作品が手書きか、AI生成か、判断してくれ」
背後から、編集長の妙に優しい声が降ってきた。
優しい声ほど怖いものはない。
恐る恐る振り向く。
「……一人でっすか?」
俺の控えめな抵抗は、編集長の爽やかすぎる頷きで粉砕された。
(殴りたい、この笑顔……!)
右腕が反射的に動きかけたが、社会人としての良心がギリギリのところで俺を止めた。
「いやいや、無理っすよ編集長。今この会話してる間にも投稿10件以上増えてますからね?」
モニターでは、まさに “作品爆撃” としか言いようのない勢いで新作が降り注いでいる。
「はっはっは、ポリ助君。そこで、君に新兵器を支給する」
編集長が得意げに差し出したのは、黒いタブレット。
色味からして、どう見ても “悪の組織が作った秘密兵器” の類だ。
画面には堂々と「手書きスキャナー」の文字。
「なんすかこれ。名前のセンス、昭和の特撮じゃないです?」
「うるさい。これが時代を変えるんだよ」
編集長は鼻息をフンッと鳴らし、完全に勝者の顔。
一方、隣の席の先輩編集者は、すでに瞳のハイライトが蒸発していた。
「またアプリですか……編集の仕事って、いつからアプリの見張り業になったんでしたっけ」
そのぼやきに、編集部全員が心の中でスタンディングオベーションしていたに違いない。
「これは試作品だ。うまくいけば完全自動化も夢じゃない――とAIが分析してくれた」
いやそこは人間が決めてくれよ……と思いつつ、念のため確認する。
「いや、最終判断は人間がやるんですよね? ね?」
しかし俺の声は、編集長のテンション高めの説明にかき消された。
曰く、このアプリは投稿作品を読み込むと、
- 手書き度(=人間らしさ)
- 手汗指数(文章の焦り具合)
- 手直し赤ペンポイント(編集者が直したくなる箇所)
- 手癖プロファイル(作家の個性として残る“癖”)
などを数値化してくれるらしい。
つまり――人間が書いたかAIが書いたか、数字でジャッジするアプリ。
「すごいじゃないっすか編集長! これがあれば仕事めっちゃ楽になりません?」
「そう思うだろ? そう思うよな? ……だからお前がテスト担当だ」
「なるほどわかったっす。……って、は???」
気づけば、編集部の視線が一斉に俺へ向けられていた。
その視線は明確にこう言っていた。
“お前しかいないんだよ(犠牲者的な意味で)”
「ひ、ひでぶっ……!」
俺が編集長の理不尽パンチラインに悶絶したその瞬間――
編集部のドアが、バァンッ! と勢いよく開いた。
逆光の中に立つ黒いサングラスの男。
風もないのに揺れる黒のロングコート。
肩には意味不明な金の刺繍。
固めたオールバックが蛍光灯の光を反射し、ギラリと輝く。
胸には「AI撲滅」のバッジ。
昭和アクション映画から迷い込んできた終末戦士――そのものだ。
「お前は……新世紀編集者、AI禁止郎!」
編集長が、わざとらしすぎる驚き声を上げる。
男はキメ顔のまま、低く言い放った。
「――AIの文句は、俺に言え」
(……言えじゃないよ! また来たよこの人!)
俺は悟った。
――今日も、俺の平穏な編集者ライフは失われたらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます