上手と下手って何て読む?

雲条翔

上手と下手って何て読む?

 JKのメグとアイがけだるそうに話をしていた。


 メグは金髪のロングヘア、アイは茶髪のショートカット。街中で目立つギャルである。



 メグ「ねえアイちゃん、あたし気づいちゃったんだ。ちょっとヘンな話の相手をしてくれないかな」


 アイ「前もって断らなくても、メグの話はいつもヘンだから、いまさらって感じだよ。手短に、なんて言わないから、勝手にどうぞ。はい拍手拍手」


 メグ「それはそれでなんかなあ……まあいいや。あのさ、上に手、下に手って書いて、なんて読む? 分かったら挙手で」


 アイ「はい。なんで二人しかいないのにいちいち手を上げさせたのか、手間のかかることを。答えは上手じょうず下手へたでしょ?」


 メグ「だよね? でもさ、舞台袖の右側と左側って、なんて呼ぶ?」


 アイ「上手かみて下手しもて、だったっけ? あっ」


 メグ「あたしの言いたいこと、分かったでしょ、アイちゃん。上手と下手、上手と下手。漢字がまったく一緒なのよ」


 アイ「もうひとつあるよね。お相撲さんの決まり手で、上手うわて投げってあるし」


 メグ「そっか、一枚上手うわてだ、のウワテか」


 アイ「不良ものの映画で、こっちが下手したてに出ていれば生意気な口を叩きやがって、とかも言うし」


 メグ「ホントだ。上手と下手、とだけ書かれてたら、どう読めばいいか」


 アイ「たしか、ヘンな食べ物をゲテモノとか言うけど、あれも下手物げてものって書くんじゃなかったかなー」


 メグ「マジかぁー、ヘタ、シモテ、シタテ、それにゲテ。四番目出てきたわー」


 アイ「今調べたら、高価な工芸品を上手物じょうてものって言うらしい。ゲテモノの対極だね」


 メグ「ジョウテ!? もういいよー、カンベンしてよー」


 アイ「思い出したけど、犯罪者のことを下手人げしゅにんとも言うよね。下に手と書いて、ゲシュ。もはやゲシュタルト崩壊だね」


 メグ「もうあたしのアタマはキャパオーバーだよ。これからの人生で、口下手とか床上手って文字を見ても、マトモに読めないよ。すっかり自信を喪失しちゃったよ」


 アイ「さらに言うと、神社の境内の中で、水がちょろちょろ出てるとこ、あるでしょ? あれ、手に水で手水ちょうずって読むの。お墓に花を供えるのを手向たむけとか言うし、手って言う字を「ちょう」とか「た」なんて、ヘタやシモテどころじゃない、もっと読めないでしょ。まだまだ大丈夫。それに、字は一緒で読み方は違うパターンなら、大人気だいにんき大人気おとなげも一緒じゃん? ここで問題。大人気のアトラクションの行列に割り込む大人気ない行動。さあどっちがどっちだ」


 メグ「だいにんきのアトラクションのぎょうれつにわりこむおとなげないこうどう、だよね」


 アイ「おお、メグが読めた」


 メグ「なんで驚くのよ」


 アイ「日本語って難しいよねえ。よく日本人は覚えたもんだよ」


 メグ「あたしらだっていつの間にか馴染んでたけどね。英語の発音を思い出せなくなるくらい」



「メグ」こと、ブロンドヘアにブルーアイの十七歳、メグ・ウィラード。


「アイ」こと、ブラウンヘアにブラウンの瞳の十七歳、アイラ・フォーセット。


 二人は親の仕事で、生まれ故郷のアメリカを離れて日本に十年ほど住んでいるが、それでもメグは漢字は苦であった。


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