エピローグ|それでも俺たちは、今日も異世界を生きている

翌朝。


世界は、何事もなかったかのように動いていた。


教室では、いつも通りクラスLINEの話題が飛び交っている。


昨日の宿題がどうだとか。


今日の小テストがどうだとか。


誰も、屋上の夜のことなんて知らない。



当然だ。


そんな話、共有されるはずがない。



クラスLINEには、今日も俺の名前はない。


俺はスマホを伏せたまま、窓の外を見た。


青空は、腹が立つほど澄んでいた。



「ねぇ、ぐぐるん」


横から、沙羅が声をかけてくる。


「今日の異世界、どうする?」


昨日、あれだけのことがあったのに。


何事もなかったみたいな顔で。


俺は、小さく息を吐いてから答えた。


「……まだ考えてない」


「じゃあ、放課後決めよ」


それだけ言って、沙羅は自分の席へ戻っていった。


変わらない。


何も。


沙羅は、異世界に行きたいままだ。


俺は、クラスLINEに入りたいままだ。


現実は、少しも面白くなっていない。


それでも。


昨日までと、決定的に違うことが一つだけある。



沙羅が異世界に行こうとする時。


そこには必ず、俺がいるということだ。


引き戻すためじゃない。


正しい世界を教えるためでもない。


ただ、

一緒に生きるためだ。



ファンタジーは、相変わらず強い。


現実は、相変わらず退屈だ。


それでも――。



ファンタジーに対抗できるものを、俺は一つだけ知っている。



クラスLINEには入れない。


誰にも呼ばれない。


それでも俺たちは。


今日も、二人だけの異世界を生きている。

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異世界行くより告白しなさい 蒼井くらげ @aoi_kurage

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