第3話 闇の左手

 さて最後はうって変わってSFです。

 ちなみに私SF執筆はスランプです(笑)


 アーシュラ・K・ル・グウィンのSF小説『闇の左手』は1969年に彼女が40歳の時に発表されました。「ヒューゴー賞」と「ネビュラ賞」の両方を受賞しています。


 両性具有(雌雄同体)の人間を通して、性別の概念を問い直しています。フェミニズムに寄り添う純文学的な側面も持っています。


 近年オメガバースという概念の小説があります。その先駆けではないですが、ここに登場する人々は通常は性別を持たず月に一度発情期(ヒート)が訪れると男性または女性の特徴を発現させ生殖を行うという設定です。その他、厳冬の惑星という設定や特殊な能力を持つキャラなど、さすがル・グインという世界が繰り広げられます。


 『闇の左手』で特徴的なのはジェンダーに関する価値観を揺さぶっているところです。我々はどうしても男として/女としての視点で対人関係を見がちですが、それは既にジェンダーバイアスがかかっているということです。この作品はその根本的な視点を変えてくれます。考えさせられますね。


 『闇の左手』が発表された頃「ニューウェーブSF」と呼ばれる新しい潮流が生まれ、従来の技術的・冒険的なSFから、より社会的・文学的テーマを扱うSFへの転換が進みました。さらにサイバーパンク作品、ハリウッド-SF映画、ガンダムのようなロボット作品などが生れてきます。


 それから50年が経過し、近年ではファンタジーや現代ドラマ、歴史など色々な分野と融合したSFが増えていると思います。この20年代もまたSFの改革期なのかもしれません。


 『闇の左手』はというタイトルは作中に登場する「光は闇の左手である」という格言に由来し、明と暗、善と悪、男と女、こうした対称的に見えるものが実は表裏一体で同種のものだという概念を示唆しています。


 昨今BL、百合、オメガバースといった性別概念に特徴を持つ小説が増えています。好き嫌いはあると思いますが、これだけ多くの作家に取り上げらるということは、LGBTQ+がもはや現代文化における必須要素(ファクター)だということなのかもしれません。


 アーシュラ・K・ル・グウィン(1929-2018)は20世紀を代表するSF作家です。アーシュラはウルスラとも読みます。ウルスラ……魔女の宅急便に出てくる絵描きさんと同じ名前ですね。

 彼女はジブリアニメ『ゲド戦記』=《アースシー》シリーズの原作者でもあります。空飛ぶ猫の児童小説も書いています(村上春樹訳)。『闇の左手』は、「ハイニッシュ・ユニバース」と呼ばれる未来史シリーズの一部で『所有せざる人々』(1974年)も有名です。


 私は昨年ル・グウィン晩年の名作『ラウィーニア Lavinia (2008年) 』を読んで感銘を受けました。ローマ神話を膨らませた歴史ファンタジーでした。そうそう、彼女は有名なSF作家フィリップ・K・ディックと同じバークレー高校の同期だったらしいです。びっくりですね。21世紀のル・グウィン、またはP.K.ディックが日本のカクヨムから誕生しないかな? そんな期待をしている私です。



 最後にウルスラつながりから、画家ウルスラお姉ちゃんの名言をどうぞ。

(映画「魔女の宅急便」より)


(スランプに陥った時)

●そういう時はジタバタするしかないよ。(絵なら)描いて、描いて、描きまくる


(それでもだめなら?)

●描くのをやめる。散歩をしたり、景色をみたり、昼寝をしたり、何もしない。そのうちに急に描きたくなるんだよ




――さて、長編の執筆に戻りましょうか。ようやく書きたくなりました。


(2026.1.19)

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王手、神の手、闇の左手 ⛄三杉 令 @misugi2023

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