帰り道
遠足の帰り道。
来た道をゆっくり下っていく。
俺たちは行きと変わらず、最後尾を歩いていた。
少し川辺に差しかかったところで、足場にしていた石にコケが生えていたらしく、思いきり足を滑らせた。
「痛ってぇ!」
思った以上に大きな声が出て、前を歩いていたクラスメイトたちが一斉に振り返る。
その視線が怖くて、思わず俯いた。
先生も慌てて引き返してくる。
「東雲、大丈夫か?」
「だ、大丈夫……です」
恥ずかしさと情けなさと痛みで、なかなか立ち上がれなかった。
どうしようもなく固まっていたとき──
隣にいた朝霧が、すっと俺の目の前に立った。
そして俺の目線に合わせて、しゃがむ。
まるで周りから俺を守るように。
「東雲、立てる?」
「えっと……足首、やっちゃったみたいで……」
朝霧相手なら、なぜか見栄を張らずに素直に言えた。
自分でも少し驚いた。
「じゃあ、肩貸すわ」
そう言うと、朝霧は俺のリュックをひょいと取り、片腕を俺の肩に回してきた。
「え、ちょっ…」
戸惑いながらも、彼の肩に手を添える。
自分よりも背の高い肩が、想像以上に頼もしく感じられた。
朝霧は他の友達にリュックを預けながら、俺の足に気を配りつつ歩き出す。
「……俺の身長が高くて悪かったな」
こんな状況でも、ニヤニヤしながらふざけてくる。
そのいつも通りの調子に、思わず笑ってしまった。
「うるせぇ、俺はまだまだ伸びるんだよ」
「なら俺はさらに伸びるわ」
痛みも忘れて、くだらない言い合いを続けた。
こんなふうに笑い合えることが、今はただ嬉しかった。
しばらくして、少しだけ沈黙が戻る。
だけど、気まずくはなかった。
気づけば、朝霧の肩に体重を預けたまま、歩幅も自然と合っている。
……そんな今だからこそ、言える気がした。
「……ありがとな」
「ん? 何が」
「いちいち聞くなよ。……全部だよ」
少しだけ顔を背けて言った俺に、朝霧はふっと笑った。
「おう」
それだけの言葉なのに、不思議と暖かかった。
ふと見上げた空は、すっかり夕方の色になっていた。
でも、俺の中はまだ陽が差しているような気がしていた。
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