第3話

 スカイside


 八歳の頃、私はとある傭兵団に拾われた。

 それ以前の私の記憶は無い。思い出せないのだ。だから、なぜ独りだったのか、それまでどうやって生きてきたのかはわからない。

 私は傭兵として育てられた。戦い方を学んだ。

 紛争地帯の支援。武器の扱い方。


「強くなれ」


「自分の身は自分で守れるように」


 傭兵団の皆は、優しかった。

 私にとっての仲間。ここが私の居場所だった。

 でも、ジパニーズに来た時、空繰カラクリが起こした事件に巻き込まれて、皆が死んだ。

 私は助かった。魔法が発現したから。


 この世界で、魔法が発現するのは十二歳までの少女のみ。

 それ以降の年齢で魔法が発現したり、男性が発現したことは今のところない。

 私が魔法を発現したのは、十二歳の頃。傭兵団の皆が空繰カラクリに襲われ、自分も殺されそうになった時に、初めて発現した。

 私は魔法局で保護され、魔法少女という存在を知り、自分も魔法少女になることを決意した。

 私は居場所を失った。でも、また新しい居場所を見つけた。

 もう失わないように、戦って、守るよ。



◇◇◇



 NOside


「いた、アメトリン!」


 頭から血を流し、疲弊した様子のマギアを見つけた。


「アクアオーラ!?」


「下がって――【ウォーターソード】」


 空繰カラクリの振り下ろされる鉤爪を水の剣で受け止める。


「先輩、どうしてここに……」


「付喪から救援信号が届いた」


「そうなんですか!? ありがとうございます!」


「動ける?」


「はい!」


 水の剣を振り、スカイが引きつける。

 そして、魔法で出した水を浴びせた。


〖ググッ!?〗


「アメトリン!」


「【サンダーレイン】」


 マギアの持つ杖からバチバチと雷が発し、それが空繰カラクリへと浴びせられた。


〖ギャアァァァァッ!!〗


 空繰カラクリの断末魔が廃工場内に響く。


「怪我、大丈夫?」


「このくらい、なんでも――ッ!?」


 よろめいて倒れそうになるマギアをスカイが支える。


「無理しないで」


「ううっ……はい」


「付喪、空繰カラクリの回収は?」


『終わったよ』


 マギアの頭に包帯を巻き、応急処置をしていく。


「そういえば、女の子に会いませんでしたか?」


「会ったよ。その子は一緒に来てたクロムスフェーンが保護した」


「よかった……」


「何があったの?」


「じ、実は、知らない男が空繰カラクリに私を倒すよう命令していて……」


「男が?」


「はい。先輩がここに来る前にどこかへ去って行ったんですが……」


「そう……詳しいことは帰ってから聞くわ」


 応急処置を終え、マギアの様子を見ていく。


「大丈夫そうね」


「来てくれてありがとうございます。本当に安心しました……」


「無事でよかった」


「はいっ!」


 マギアが嬉しそうに返事をする。

 そうして、二人は帰って行ったのだった。


「(もう、仲間を死なせない。私が守るんだ)」


 スカイは心の中でそう思った。






◇◇◇






 エンプティ・ガール。

 エンプティとは、「空っぽ」「中身のない」「無意味な」といった意味の言葉。


 記憶を失った少女――空っぽだった少女は、再び仲間を、居場所を見つけた。


 魔法少女である彼女は、大切なものを守っていくのだろう。

 今度こそは失わないように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エンプティ・ガール 蒼月龍華 @ringo16322

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画