第2話 未完成だから必要なこと
「じょ、冗談だよな?」
俺は必死に「冗談だ」と肯定してくれと思いながら聞く。
「こんな嘘つくわけないでしょ!?」
「いや、逆にそんな嘘信じられるかよ!?」
お互いにらみ合い硬直状態になる。
「……なら証拠を見せるよ」
「は?なにいって……」
西条は上着を脱ぎ始める。
ここで俺は西条が本気を見せようとしていると気づいた。
「ストッープ!!」
俺は西条の手を握り止めさせる。
「私は気にしないよ?」
「俺が気にする!」
俺は視線をそらして言う。
「と、とにかく話は信じる。だけど完全には信じない。未完成だしこれが一番いい」
「むう。なんか不服なんだけど?」
頬を膨らませている西条。
リスみたいだ……は!?
俺は不覚にも可愛く見えてしまっていた。
女の子だと思えば多少は可愛く見えても仕方ないよな?うん。仕方ない。
「ねえ、それで感想は?」
「感想?」
「うん。男じゃなくてがっかりした?」
「は?何でだよ性別が変わったからって西条最上であることは変わらないだろ?」
俺が当たり前のことを言うと、西条はまるで遠い世界にいるかのようになっていた。
「そうだね……」
「だろ?」
「ふふ、初めてだよ。女でもいいなんて言われたのは」
雨上がりの空のようにすっきりした表情で笑う西条だった。
「そ、そうか」
俺はその眩しさに耐えきれずそっぽを向く。
「うん!」
「で、何でそもそも男の振りなんてしているんだ?」
「それはね、パパの言いつけなんだ…」
西条の顔に色がなくなる。
「親父さんの?」
「うん。子供は私一人でね。パパは他の人に会社を継がせないために必死になって私が女であることを隠しているの」
「それは……」
「虐待に近いんじゃないのか?」その言葉を俺は飲み込んだ。
それ以上踏み込めば、取り返しがつかないような気がした。
「つらくはないのか?」
「そうだね…つらくないと言うとつらいかな?」
外から見ても分かる取り繕った笑顔で答える。
「なあ、西条。お前が常に完璧を求めているのも親父さんのせいか?」
「………」
西条は何も答えない。
その代わり小さな
「俺は、お前の気持ちは分からない。人は未完成だから」
俺ははっきり言い切る。
期待をさせたくないからだ。
家族だろうと恋人だろうと友達だろうと結局は違う人間だ。
他人の気持ちが完全に分かる奴などいない。
「だけど、話を聞くことも相談に乗ることもできるし一緒にストレスを解消することもできる。限りなく限界まで理解できるようにすることはできるはずだ。未完成だからこそ俺は理解しようとすることをあきらめない」
「い…いい…のかな?」
嗚咽に交じりながら言葉を必死につなぐ西条。
「当たり前だ。未完成だからこそ必要なことだ」
「あ…りが…とう」
俺の袖をひっそり握りしめて泣いている西条を俺は静かに見守っていた。
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