第二章:反乱の旗

 アレクサンドリアの大港は、戦火に包まれていた。プトレマイオス13世の軍は、シーザーのローマ軍を港と王宮地区に閉じ込め、アレクサンドリア戦争を繰り広げていた。アルシノエ四世は郊外の陣営に到着すると、将軍アキラスと宦官ポティヌスに迎えられた。


 彼らは彼女をプトレマイオス王家の象徴として担ぎ上げ、兵士たちの士気を高めた。エジプトの民衆は、クレオパトラ7世がローマと結託したことに強い反発を抱いており、アルシノエ四世は彼らの支持を得て自らを「アルシノエ四世、女王」として宣言し、プトレマイオス13世を脇に押しやった。


「我々はクレオパトラ7世とシーザーを倒す!」


 アルシノエ四世は陣営の中央、ナイル河口近くの野営地で叫んだ。彼女の声は若々しくも力強く、兵士たちの心を掴んだ。ガニュメデスは彼女の側で戦略を練った。彼はシーザーの艦隊を封鎖するために大港の水路を閉じ、飲料水に塩水を混ぜる狡猾な戦術を展開した。


 シーザーの軍は王宮地区に閉じ込められ、淡水不足に苦しんだが、シーザーは多孔質の石灰岩層に井戸を掘らせて対抗した。しかし、状況は依然として厳しかった。


 アルシノエ四世はガニュメデスの知恵を頼りに、軍を指揮した。彼女は戦場に立つ姿で兵士たちを鼓舞し、ファロス島の灯台を奪おうとするシーザーの攻撃を撃退した。


 戦闘は激化し、ガニュメデスはファロス島の灯台をめぐる攻防でシーザーを苦しめた。シーザーは自ら兵を率いて島を奪取しようとしたが、エジプト軍の弓矢と投石機の猛攻を受け、橋頭堡から海へ追い落とされた。シーザーは紫のマントを捨て、泳いで逃れた。この勝利でアルシノエは「ファロスの守護者」と称賛された。


 しかし、軍内の対立が深刻化した。アキラスはガニュメデスの権力を妬み、衝突した。


「アキラスは危険だ。彼を排除しなければ、軍はまとまらない」


 ガニュメデスの進言に従い、彼女はアキラスを暗殺させた。この大胆な行動は、彼女の権威を強めたが、同時に軍内の不協和音を増幅させた。ガニュメデスを軍の第二の指揮官に任命し、アルシノエ四世は自ら最高司令官として振る舞った。


 彼女はナイル河口の湿地帯で陣を張り、シーザーの補給線を断つ作戦を立てた。彼女の軍は街の通りを封鎖し、シーザーを閉じ込めたが、シーザーは海岸沿いに船を送り戦略用地の確保を試みた。


 勝利の希望はつかの間だった。エジプトの将校たちはガニュメデスの戦術に失望し、シーザーと密かに交渉を始めた。彼らは平和の名目でアルシノエ四世をプトレマイオス13世と交換することを提案した。アルシノエ四世はこの裏切りを知り、激怒したが、軍の統制が崩れ始めていた。


 紀元前47年、シーザーの援軍のペルガモン王ミトリダテス率いる連合軍が到着した。ナイル河口の湿地帯で決戦となった。泥濘の地形でエジプト軍は混乱し、シーザーの重装歩兵と騎兵が突撃。ローマ軍は橋を架け、側面から攻撃、エジプト軍を壊滅させた。プトレマイオス13世は逃亡中に溺死、アルシノエは落馬して捕らえられた。


 アルシノエ四世は馬上で指揮を執っていたが、シーザーの軍勢に包囲され、捕らえられた。プトレマイオス13世はこの戦闘で溺死し、アルシノエ四世の夢は砕け散った。彼女の心は絶望に沈んだが、しかし、同時に姉クレオパトラ7世への憎しみが燃え上がった。


「なぜ彼女が王位を手にし、私はこうなるのか?」

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