手のひら返し! 〜幼馴染の魔の手を振り切って、"俺の幸せ"を掴むまで~
Resetter
第1話 差し出さされた手
今でも覚えてる。
「ほらぁ、たーくん! いこー」
柔らかな陽射しの中。舌っ足らずな声。差し出される、小さな手。
記憶の中の"俺"は、少し遠慮がちにそれを掴むんだ。
すると、その小さな女の子は、満面の笑みで走りだして――。
――ピピピピッ
アラームが、これでもかと鳴った。自己主張が強すぎる。俺は、微睡みから強引に掴み上げられた。
「……またこの夢かぁ」
最近、よく見る……昔の夢。
「はぁ……行きたくないけど、準備するか……」
……今の俺は、悲しき高校生である。
意識は上げられてしまったが、気分は下がってしまうのだ。まるで水揚げされた魚のように。
▽
「おっそい」
「……ごめん」
大きな目を細めて、顎を上げ、見下すように見つめてくる少女。一応、幼馴染の
「はぁ……。これだからレイサイは使えねぇって言われんだよ」
――レイサイ。俺のあだ名だ。
有名な戦国武将に肖って付けられたという、"
上手いこと付けるもんだ。と、思わなくもないが、俺は付けられた本人だ。あまり笑えない。
とはいえ。"忠勝"は、完全に名前負けだと思う。
五十回以上の合戦で傷を負わなかった、本多忠勝公。でも、俺、本間忠勝は、外に出れば傷だらけだ。
こんな名前を付けてくれた父親も、何を考えていたんだか。
「おい。ぐずぐずすんなよ」
「いたっ……。ごめん」
瑠偉の手が、硬く握られ、俺の左頬にめり込んだ。普通に痛い。
「ったく。レイサイはウチがいないとホントだめよね」
ふん、と瑠偉は鼻を鳴らす。
瑠偉がいないとだめ……か。あの時から、あの夢の続きから……そう、なのかもしれないな。
「ほら、早く持てよな。ちゃんと気を遣えっての」
差し出された手。その手には、可愛らしいデザインの鞄が握られている。
見栄えだけはいい。ずいぶんと似合っているとは思う。実に瑠偉らしい。
「……ごめん。持つよ」
瑠偉の鞄を受け取り、肩に担いだ。
毎朝の、俺の役目、日課だ。
逆らえば、ひどいことにしかならないのだ。だから俺は、逆らわない。
足取り軽く歩き出す瑠偉の背中を、鞄の重みよりもずしりとした気持ちで、俺は追いかけた。
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