第2話
犬は夫が欲しがった。
一緒に眠れる小さな犬が欲しいと強請られ
わたしが客に強引に買わせたものだ。
つまり
おねだりの
おねだり。
脚の悪い仔犬をわざと選んだ。
わざわざ誰もが欲しがるような満点の仔犬はいらないと思った。
このままでは売れ残り
様々な店を渡り歩き
行く末は分からない仔犬を
客に甘え倒して格安でペットショップから譲り受けたのだ。
始めの仔犬はベッドで暴れ倒す犬だったので
わたしは同居と割り切りケージで寝かせていた。
夫はどうしても
小さな犬と眠りたいという願望を捨てきれなかったようで
わたしは二度目のおねだりのおねだりを
発揮した。
またしても
今度は、とうのたった、ペットショップを渡り歩きまくりもう疲れました、という犬だった。
始めこそ怯えていたが
2匹目の小型犬は
ベッドでわたしと夫の間に大人しく伏せる犬だったので
家の間取りの問題も手伝って
どうやら夫は満足したようだった。
兎は
ただ鎮座している。
一番の先住者だ。
わたしが現金払いで
衝動的に迎えた
真っ白い兎だ。
ソファで人間ではない彼らの空間を見るとはなしに眺めていると
欠伸が出て喉の奥が鈍く痛んだ。
おそらく
救急外来で管を挿入されたのだろう。
記憶がないのだ。
深く眠ってしまっていて
その時は気付かなかったが
つい先程夫の性器を喉まで咥えた時に
ああやられたのだな
とぼんやりとその情けない光景を思い浮かべた。
しばらくは仕事を休もう。
おねだりのおねだりは
こんな時ささやかに、暮らしを回さなくてはという強迫観念からわたしを助けてくれる。
腕の痣は酷いものだ。
細い血管に無理矢理侵入しただろう注射針は
大きな痣と仕事に出られない理由をわたしの両腕に作った。
腫れ上がった腕を
しばし見つめ
そっと撫でてみる。
コーヒーを飲みすぎたせいか
3日ぶりにアパートに帰れたからか
今夜は眠れそうにない。
わたしの中で果てた夫は
呑気なものだ
丸まって眠っている。
湯船も
3日ぶりだった。
小鴨のように狭いアパートの中で後をついて回る夫を
半ば疎ましく思いながら
口を出す気にもなれなかった。
今
気持ちを淡々と紙に書き出すことだけが
わたしに与えられた自由だった。
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