鬱ゲーの全滅イベントで年上ヒロイン達を庇ったら【暴食の魔人】になって生き残った。――「理性が消える前に殺して」と頼んでも、曇った彼女たちが許してくれない。

菊池 快晴@書籍化進行中

第1話 師匠には申し訳ないが、俺には才能がないから命を使います

 ダークウェブソウル――通称【DUS】っつうゲームがある。

 あらゆる雑誌で最悪の鬱ゲーとして不動の一位を飾る問題作。

 だが同時に、その緻密に練り込まれたシナリオは最高の泣きゲーとしても一位を獲得し、数多のプレイヤーを熱狂させた。

 

 主人公は現代から異世界に転生し、何も知らない森からスタートする。

 不思議な生物、初めての村、街、世界を自由に動き回ることができる。

 だが世界を楽しんでいるうちに【DUS】の世界には【魔人】と呼ばれる悪魔が現れる。つまり、ボスだ。

 道中、様々な選択肢はあるものの、最終的な目標はこの【魔人】を倒すことでゲームがクリアとなる。


 で、ここからが鬱ゲーの本領発揮。この【魔人】にはクソみたいな能力がある。

 それは、呪いを付与した相手を【魔人化】させる能力だ。

 黒炎に焼かれた人間は、激しい痛みととに身体が変化し、化け物になる。

 見た目も最悪だ。どす黒い皮膚になり、魔物にしか見えなくなっちまう。

 自我を失い、見たものをすべて殺戮するモンスターと化す。

 そう、これこそが、最悪な鬱ゲーと賞賛される所以。


 想像してみよう。このキャラいいなと思ったり、好きなヒロインが【魔人化】し、敵となって立ちふさがる姿を。

 しかも最初は殺してからじゃないと気づかないという最悪な展開だ。

 肉を切り裂き、骨を砕き、心臓を潰して現れるのは、プレイヤーが一番好感度を上げた相手だ。


 ――ああ、最低だよ。マジで。4ねよ。


 俺が初めてプレイしたときは心底運営に吐き気がした。

 よちよち歩きで何も知らない自分に、優しく、時には厳しくしてくれた【ヒロイン】がどす黒い化け物になって現れるんだ。マジで反吐がでそうになった。


 何より最悪なのは、死んだ後は人間に戻っちまうところだ。

 そんなの反吐が出ないほうがおかしい。


 で、さらに、【魔人化】になるのは一人や二人じゃない。プレイヤーのクリア速度が遅ければ遅いほど増える鬼仕様。


 が、しかしここからがもっとクソ。

 最速でクリアしても【魔人化】が免れないキャラがいる。

 運営にはマジでキレそうになった。つうか、キレた。なんせ、ヒロインたちが助かるルートは用意してるくせに、初めて剣を教えてくれた【師匠】にはそんな救済ルートには一つも残されてないんだから。

 しかも1キャラじゃなくて、3キャラもだぞ? 全員が年上だからって死んでいいわけねえだろうが。運営てめぇ、ママ系の良さわかってねえのか? お姉さまの良さを百通り説明してやりたかった。いや、実際送った。返事来なかったけど。

 マジで包容力ってもんを叩きこんでやりてーわ。





 ――で、俺はそんなガチ吐き気しちまうような【DUS】に転生しちまったワケ。




 それも主人公でもない、モブの、何の能力もない、魔力も、ほとんどない、みっそかすの雑用係・・・のレイに。

 








レイ・・、まだ剣を振っているのか。――お前は補給係ポーターを目指すんだろう。そこまでする必要はない」


 夜、さびれた街の近くの広場で一人、剣を振っていた。

 気配もなく現れたのは、剣鬼けんきのレズリィ。

 ウルフカットの赤髪が月夜に照らされ、その鋭い眼光と美貌があらわになる。

 年齢は28歳だが、肌には染み一つなく、胸ははち切れんばかりに服を圧迫していた。

 寒くてもへそはいつも出て、腰はくびれて引き締まり、腹筋はバッキバキ。


 背中には愛刀の八咫烏ヤタガラス、生来魔力がないというハンデを抱えつつも、剣技一つで成り上がって来た真の強者でもある。

 

 で、俺に剣を教えてくれた師匠・・であり、【DUS】でも【師匠】と呼ばれた人気キャラクターだ。


「レズリィ師匠とは思えない発言ですね。昔なら、あと千回だって言ってたじゃないですか」


 ふっ、と懐かしさを取り戻すようなに、レズリィは夜空を見る。


「もう五年ほど前か。お前と、初めて出会ったのか」


 俺と師匠・・が出会ったのは、ドゥアーナという悪人達が集うクソみたいな街だ。そこで師匠は、とあるギャングの用心棒・・・をしていた。

 偶然じゃない。初めからレズリィを探していた。


 しっかし大変だった。なんせ、主人公でもなんでもない、村の落ちこぼれのレイに転生したもんだから、森を抜けるのに三年かかった。

 独学で剣術を学んで、魔物を倒して血だらけになって街を、国を経由した。


 なんでそこまでして会いたかったのか、それはもちろん俺が【DUS】を愛してたからだ。で、【師匠】が好きだったからだ。

 百回クリアすれば見られる特殊会話イベントだとか、朝から晩まで、なぜかBボタンを連打してたら見られる笑みを浮かべるシーンだとか、クソみたいな仕様も全てをクリアしたほどに。


 なら、どれだけ血を流しても会いたいのは当然だろう。

 だが最悪で最悪だったのは、レズリィは別のバットエンドルートにまっしぐらだったってこと。


 【DUS】には様々な選択肢があり、選択によってはそのキャラと二度と会わないこともある。

 で、レズリィの中で最悪な一つは、主人公がレズリィと会わなかったどうなるのか? という外伝エピソードだ。

 世界に嫌われ、騙され、地獄から抜け出せず、ゴミみたいな街で文字通り泥水と残飯を漁って生きて死ぬ。剣技? んなもん使えない。なんせ、人助けをしたら裏切られ、両腕を切られちまうんだから。


 で、俺はまさにそのタイミングに出くわした。


 はあ? 主人公なにしてんだよクソが! って心の中で叫びながら、とにかく無我夢中で剣を振った。そりゃお粗末なもんだ。村の小僧が、数年頑張ったってたどり着ける領域はたかが知れてる。

 だが注意をそらすのには役立ち、レズリィは俺を助けてくれた。

 そこから俺の【師匠】になった。


 けーど、最悪だった。


 毎日毎日毎日毎日剣を振る。それが嫌だったわけじゃない。


 俺の才能のなさ・・・・・にだ。


 考えてみろ。凡人が努力したってたどり着ける領域は限られてる。

 赤ちゃんからやり直したからって、努力したって、大谷翔平になれるわけねー。


 っても、日本のプロ野球、わかんねーけど、そのレベルには達したとは思う。

 だがそんなの、この世界じゃ足りない。全く足りない。なんせ、【DUS】だ。


 レズリィはそれでも根気良く教えてくれた。毎日、それこそ毎日。

 血反吐を吐いて頑張ったが、師匠の足元にも及ばねーでもう本気で申し訳なかった。

 ただ。絶望的に才能がなくても頑張れたのは、俺が未来の【DUS】を知っているからだ。

 【魔人】がいる。それも最悪だったのは、主人公がどこにもいなかったこと。


 はあ? なんつう、クソゲーの途中だ。

 

 なんだっけあれ、俺がやらなきゃ、誰がやる。まさにその状態のスタート。


 放っておいても未来は絶望。ならやるしかねーときたもんだ。


 俺はレズリィの無事を見届けて一人で頑張るつもりだった。

 けどやっぱ師匠は心底優しかった。あの日以来、剣をずっと教えてくれた。


 で、今日。


 だが否が応でもわかる。才能がねえ、百年努力しても足りない。

 だって千回はクリアした。【魔人】の足元にも及ばない。


 けど最悪バッドエンドだけは回避したかった。それだけを、ただひたすらに考えていた。


 本音を言えばもちろん実力で勝ちたかった。でも、それは無理だ。身の程は知る。何よりも大事。


 毎晩考え、ふと妙案が浮かんだ。

 何度も何度もクリアして、主人公ではできなかった唯一の【救済】ルートを見つけた。

 まさに凡人の俺だからこそできること。

 といっても一発勝負。勝算はねーけど、計画はある。最高だ。なんせ、ちょびっとでも光が見えるんだから。


「レズリィ師匠、もっと俺に剣を教えてください」


 残念なのは、それが成功したとしても、【師匠】のその後が見れないってことだが。まあ、そんなもん些細なこと。


「……まったく、エレノアに言いつけるぞ。あいつはお前が少しでも痩せると、鬼の形相で飯を食わせようとするからな」

「勘弁してくださいよ。ただでさえ、ソフィアさんからも『怪我が多すぎる』って、軟禁されかけてるんですから」

「まあいい。わかった。――なら、もっと腰を落とせ。お前は重心が高すぎる」


 ほんと、ありがてーよ。


 俺みたいな不甲斐ない弟子をもって、心の中は最悪だと思ってるだろう。恩義を感じてるとはいえ、申し訳ねー。


 ちゃんと【師匠】の声を焼き付けとこう。



 これが最後の夜になるんだからな。

 


 ――――――――――――――――

 曇らせって泣ける。かなしい。でもめっちゃ引き込まれるってことで書きたくなった。今は反省していない。


 年上ヒロインの曇らせがない? ある? 見当たらない! じゃあ書いてみるか、イマココ。


 見切り発車ですが、皆さんの熱量が感じられれば書き切れる気がします!


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