第6話 青い空に

「始動!」


 DB601エンジンは力強く回った。

 颯太はエンジンに触れて確認し、うなずいた。


「いい。今までで一番いい」


 颯太はコックピットに乗って座り、操縦系統、エンジンのレスポンスを確認する。

 全て良好。

 大声で宣言した。


「整備完了! エンジン好調! 飛行よし!」


 整備士達が喜び、パイロットが駆け寄り、主翼に乗ってコックピットに近づく。


「配置を交代します」


「了解! 機体、エンジン共に良好」


 颯太はパイロットと交代し、機体を降りる。


「時間です!」


「チョーク外せ!」


 屈んで手を振り、両脚の車止めを持っている部下に外すよう指示。

 二人は素早く、車止めを外して手に持つと主脚から離れた。


「発進よし」


 颯太はパイロットに無線と手振りで合図する。


 パイロットは敬礼すると、スロットルレバーを引き、プロペラの回転を上げ、滑走路に向かって進んでいった。


「出てきたぞ!」


 飛燕が格納庫を出て、誘導路へ行く姿を見て観客が歓声を上げた。

 割れんばかりの拍手と歓声を浴びながら、滑走路に行くとパイロットは後ろのキャノピーを前に引っ張って閉めるとスロットルレバーを引きフルスロットルへ。

 観客の歓声をかき消す獣の咆哮のようなエンジン音を上げて離陸。

 銀色の機体が浮いた。

 そのまま加速を続け急上昇。

 空に飛び込んだと思っていると反転急降下。

 観客の目の前まで接近した後、急激な引き上げを行い、宙返り。

 一回転終え、直進したかと思うと機体を傾けバレルロール。

 レースの飛行も見事だが、一五〇〇馬力のエンジンと時速五〇〇キロ以上の高速を出せる飛燕の、キレのよい機動、時に翼端から雲を引く飛行を見せるたびに観客は沸いた。


「大丈夫だな」


 飛行を見て、エンジン音を聞いていた颯太は、機体が好調であることを確認し心から満足した声を上げた。


「ありがとう、ハンス、おかげで最高の飛行になった」


 颯太が礼を言うと、ハンスは無言で手を上げた。

 意味を理解した颯太も手を上げて近づく。

 空を飛ぶ飛燕と太陽を背に、無言でハイタッチを交わした。





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手で聞く翼ーー飛行機を送り出す整備士 葉山 宗次郎 @hayamasoujirou

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