第2話 『クリーンな会社で末永く!』
新卒で入社して早十年。『クリーンな会社で末永く!』という謳い文句に惹かれ、──今考えたら一体何に惹かれたのか。正直サッパリ分からない。
周りの内定ラッシュに煽られ、
「都会は怖いって言うやない? いつでも帰っちょいで」
自分の生まれ育った場所は超が付くほどド田舎で、都心に内定というだけで近隣住民、はたまた顔も知らないおじさんにまで祝われた。
で、迎えた初出社日。隣の席にいたのは可愛い顔の
テレビのニュースで話を聞いてはいたものの、所詮は対岸の火事。超が付くほどド田舎にそんな種族は来ない。都市伝説だと思っていた。
「母さん……! この会社、四割ゾンビだよ!!? もう帰りたいよおおぉお」
帰宅するなり、着信履歴に親の名前を見つけた。殆ど半泣きの状態で折り返すと、半狂乱地味た声が居室に響き渡る。
「そうなが? やっぱり都会は違うわねえ。なあに? あんた虐められたが?」
「ううん……。皆優しいよ。でも、たまに腐敗臭が凄い人はいるかな……」
クリーンな会社って、何処がクリーンだよ! 空気は浄化されてないし、指とか歯が落ちてたりするし!
確かにね? 求人情報には『多様性を大切にします』とは書いてあったよ? でも、そうじゃないでしょ! そんな意味とは思わないじゃん!
「なら、大丈夫やね。こっちでもたまに臭い人おるやない。一緒よ、一緒」
「そう、か……?」
「そうよお。それに見た目で判断したらいけんって、いつも言うとる──、あらいけん。お鍋噴いてしまうから切るで。元気でやりや」
「え、ちょ……」
ぶつり。ツー、ツー。
ビジートーンが無情にも木霊する。え……? 切れた? 何でよ! いつでも帰っちょいでって言うたやんか!
悔しさに実家から持参した愛用サンドバッグクッションを何度か叩き潰すと、途端にどうでも良くなった。負の空気が部屋に満たされ、溜息をつきながら窓を開ける。
窓の向こうでは酔っ払いと
「呑気すぎるでしょ、って。あ、腕取れた」
二人は取れた腕を見ながら大爆笑している。凄え楽しそう。たしかに見た目で判断することは良いことじゃない。
一先ず暫く様子を見よう。転職するのはそれからでも遅くない。
と、そんなことを考えていたら十年が経っていた。相変わらず、この会社の謳い文句は『クリーンな会社で末永く!』。
職場における透明性が高いことは認めるが、色んな意味でクリーンというには程遠い。その一つが人間と
ちなみに、この会社で働く
とりあえず、謳い文句に沿っている点としては、このままだと自分が会社に骨を埋めそうな勢いであること。とはいえ、社外用雜誌のコラムなんかには絶対載りたくない。
デッド・ワーク! 片霧 晴 @__hal07
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