接合点

緋心が友達と髪を染め直す予定の

土曜日。




蒼馬は家でニュースを見ていた。




二週間前に隣県で起きた小学生の

女児殺人事件の容疑者として、

未成年が逮捕されたらしい。



蒼馬は少年事件や裁判の傍聴レポートを

調べることが好きで、こういう事件が

ニュースに出る度に調べている。






蒼馬のそんな様子を見て、母は


「もー。悪趣味よ、人が亡くなってるのに。

お父さんも大好きだったわね…そんな所は

似なくていいの!ほら、お昼出来たわよ!」


と、テーブルに炒飯とスープを

並べながら言った。




蒼馬の父は、中学校の卒業式が行われた

翌日、病気で亡くなった。



父は今の蒼馬のように、少年事件や

裁判のレポートを調べるのが好きだった。




どんなに相手が憎くても

殺すという手段が絶対に浮かばない。

何故殺そうという感情が生まれるのか。


邪念に駆られても、捕まる未来が

待っているのに何故抑えられないのか。



始まりは自分には絶対にない感覚を

知りたいと思う気持ちからだった。




きっかけは素朴な疑問から始まり、

その後蒼馬が生まれて父になると、

親目線で考えるようになる。



全ての子供を被害者にはもちろん、

加害者にはしたくない。



例えどんなに家庭環境が悪くても、

殺していい理由にはならないし

被害者には全く関係のないこと。



ただ、育った環境が悪い道へ進めと

背中を押してしまうのであれば

防ぐことが出来るのではないか。



捕まってから社会に出るまでの環境で

更なる被害者を出さないよう、

更生させられるのではないか。



そんな気持ちを抱くようになり、

保護司や児童相談員の活動に

関心を持っていた。





そんな父に影響され、

小学校中学年になった頃から

蒼馬も一緒に調べるようになった。






***






蒼馬「パパ、テレビ見て!僕と同い年の

女の子が自分のお父さんを殺して

補導されたって!何で逮捕じゃないの?」





父「14歳未満は刑事責任能力がないから

逮捕できないんだよ。蒼馬には難しいね。


これから聴取されたり、精神鑑定をして

更生する為に相応しい道を探すんだ。


小学生…しかも女の子?子供では男に

力で敵わないだろう。しかも父親って。

到底殺せるとは思えないなあ…。」





加害者が小学生の女児だという事もあり

しばらくの間、大きく取り上げられた。



同時に、父親の素行の悪さや暴力的な

一面等、関係者から数々の悪評が寄せられ、

父親への否定的な意見が報じられていた。




少女は小学4年生。10歳の犯行のため

少年法が適応され、個人情報は伏せられた。




週刊誌には、少女の親族や友達、

近所に住む人達の声が掲載された。




親族は、被害者である父親に対して

昔は優しくていい子だったが、最近は

酒を飲む量が増え、荒れていたと話す。



少女の事は、身内を抜きにしても

本当に可愛くて天使のようだったと

涙ながらに語ったそうだ。



少女の友人は、優しくて可愛い子で

いつも皆の中心にいた。

以前、父親について悩んでいると

聞いた事を証言。




更に近所に住む人は、


礼儀正しくて本当に可愛らしい子。

あの子が殺人なんて信じられない。


いつも左手首に包帯やリストバンドを

付け、押さえ付ける仕草をしていて

不思議だったが、今思えば父親に

何かされて怪我を隠していたのでは…


あれはSOSだったかも…助けたかったと

悔やんでいると話した。






ただ、被害者の勤務先の関係者が

話す人物像だけは違った。


とても真面目でいい人。

悪い印象は一切なく、格好よくて

人気があったという。



だが、何故かその情報が出たのは

それっきりだった。





どの報道も家庭環境の悪さと

父親からの暴力から逃げるための

正当防衛だったのでは、と


周囲の声から同情的なストーリーを

作り上げていた。



勤務先の証言は、そのストーリーを

描く上で邪魔だったのだろう。






後に、少女と母親の聴取から



泥酔した父親が母親に暴力をふるい、

母親が倒れ込むと標的を少女に変えて

ふらつきながら向かってきた。


少女は身の危険を感じて

ホールケーキを切るためテーブルに

置かれていた包丁を手に取り、


襲いかかろうとして足を滑らせた隙に

刺して殺害した



という事実が明らかになった。




精神鑑定では発達障害などの

症状は見られず、取り乱すこともなく

異常はないと判断された。




少年審判を経て、少女は

児童自立支援施設へ

移送されることになった。





少年法で個人情報は伏せられても

卒業アルバムや個人名などは

出回ってしまうものだが、



少女の場合は違った。



正当防衛と認識されていることと、


関わった全ての人々が少女を愛し、

疑うことなく信じていたため、


誰一人裏切る真似をせず、

少女にまつわる情報流出は

一切なかった。





蒼馬「パパ、テレビ見て!僕と同い年の

女の子が自分のお父さんを殺して

補導されたって!何で逮捕じゃないの?」





父「14歳未満は刑事責任能力がないから

逮捕できないんだよ。蒼馬には難しいね。


これから聴取されたり、精神鑑定をして

更生する為に相応しい道を探すんだ。


小学生…しかも女の子?子供では男に

力で敵わないだろう。しかも父親って。

到底殺せるとは思えないなあ…。」





加害者が小学生の女児だという事もあり

しばらくの間、大きく取り上げられた。



同時に、父親の素行の悪さや暴力的な

一面等、関係者から数々の悪評が寄せられ、

父親への否定的な意見が報じられていた。




少女は小学4年生。10歳の犯行のため

少年法が適応され、個人情報は伏せられた。




週刊誌には、少女の親族や友達、

近所に住む人達の声が掲載された。




親族は、被害者である父親に対して

昔は優しくていい子だったが、最近は

酒を飲む量が増え、荒れていたと話す。



少女の事は、身内を抜きにしても

本当に可愛くて天使のようだったと

涙ながらに語ったそうだ。



少女の友人は、優しくて可愛い子で

いつも皆の中心にいた。

以前、父親について悩んでいると

聞いた事を証言。




更に近所に住む人は、


礼儀正しくて本当に可愛らしい子。

あの子が殺人なんて信じられない。


いつも左手首に包帯やリストバンドを

付け、押さえ付ける仕草をしていて

不思議だったが、今思えば父親に

何かされて怪我を隠していたのでは…


あれはSOSだったかも…助けたかったと

悔やんでいると話した。






ただ、被害者の勤務先の関係者が

話す人物像だけは違った。


とても真面目でいい人。

悪い印象は一切なく、格好よくて

人気があったという。



だが、何故かその情報が出たのは

それっきりだった。





どの報道も家庭環境の悪さと

父親からの暴力から逃げるための

正当防衛だったのでは、と


周囲の声から同情的なストーリーを

作り上げていた。



勤務先の証言は、そのストーリーを

描く上で邪魔だったのだろう。






後に、少女と母親の聴取から



泥酔した父親が母親に暴力をふるい、

母親が倒れ込むと標的を少女に変えて

ふらつきながら向かってきた。


少女は身の危険を感じて

ホールケーキを切るためテーブルに

置かれていた包丁を手に取り、


襲いかかろうとして足を滑らせた隙に

刺して殺害した



という事実が明らかになった。




精神鑑定では発達障害などの

症状は見られず、取り乱すこともなく

異常はないと判断された。




少年審判を経て、少女は

児童自立支援施設へ

移送されることになった。





少年法で個人情報は伏せられても

卒業アルバムや個人名などは

出回ってしまうものだが、



少女の場合は違った。



正当防衛と認識されていることと、


関わった全ての人々が少女を愛し、

疑うことなく信じていたため、


誰一人裏切る真似をせず、

少女にまつわる情報流出は

一切なかった。









蒼馬「パパ、テレビ見て!僕と同い年の

女の子が自分のお父さんを殺して

補導されたって!何で逮捕じゃないの?」





父「14歳未満は刑事責任能力がないから

逮捕できないんだよ。蒼馬には難しいね。


これから聴取されたり、精神鑑定をして

更生する為に相応しい道を探すんだ。


小学生…しかも女の子?子供では男に

力で敵わないだろう。しかも父親って。

到底殺せるとは思えないなあ…。」





加害者が小学生の女児だという事もあり

しばらくの間、大きく取り上げられた。



同時に、父親の素行の悪さや暴力的な

一面等、関係者から数々の悪評が寄せられ、

父親への否定的な意見が報じられていた。




少女は小学4年生。10歳の犯行のため

少年法が適応され、個人情報は伏せられた。




週刊誌には、少女の親族や友達、

近所に住む人達の声が掲載された。




親族は、被害者である父親に対して

昔は優しくていい子だったが、最近は

酒を飲む量が増え、荒れていたと話す。



少女の事は、身内を抜きにしても

本当に可愛くて天使のようだったと

涙ながらに語ったそうだ。



少女の友人は、優しくて可愛い子で

いつも皆の中心にいた。

以前、父親について悩んでいると

聞いた事を証言。




更に近所に住む人は、


礼儀正しくて本当に可愛らしい子。

あの子が殺人なんて信じられない。


いつも左手首に包帯やリストバンドを

付け、押さえ付ける仕草をしていて

不思議だったが、今思えば父親に

何かされて怪我を隠していたのでは…


あれはSOSだったかも…助けたかったと

悔やんでいると話した。






ただ、被害者の勤務先の関係者が

話す人物像だけは違った。


とても真面目でいい人。

悪い印象は一切なく、格好よくて

人気があったという。



だが、何故かその情報が出たのは

それっきりだった。





どの報道も家庭環境の悪さと

父親からの暴力から逃げるための

正当防衛だったのでは、と


周囲の声から同情的なストーリーを

作り上げていた。



勤務先の証言は、そのストーリーを

描く上で邪魔だったのだろう。






後に、少女と母親の聴取から



泥酔した父親が母親に暴力をふるい、

母親が倒れ込むと標的を少女に変えて

ふらつきながら向かってきた。


少女は身の危険を感じて

ホールケーキを切るためテーブルに

置かれていた包丁を手に取り、


襲いかかろうとして足を滑らせた隙に

刺して殺害した



という事実が明らかになった。




精神鑑定では発達障害などの

症状は見られず、取り乱すこともなく

異常はないと判断された。




少年審判を経て、少女は

児童自立支援施設へ

移送されることになった。





少年法で個人情報は伏せられても

卒業アルバムや個人名などは

出回ってしまうものだが、



少女の場合は違った。



正当防衛と認識されていることと、


関わった全ての人々が少女を愛し、

疑うことなく信じていたため、


誰一人裏切る真似をせず、

少女にまつわる情報流出は

一切なかった。






その後の流れを知った蒼馬は




蒼馬「どうしよう…理由があっても

人を殺したのは事実でしょ?この子、

僕と同い年だよ?もし施設から出て

誰にも知られてない場所とかに

引越して、それがこの町だったら…」





父「まさか!ここに引っ越してくる

確率なんて…まあ有り得ないだろう。

大丈夫だよ、蒼馬にはパパがいるさ。」






蒼馬「そんなのいざという時に僕の

近くにいてくれないと意味ないよ…

いつも一緒なんて無理なんだからさ。」






父「大丈夫。どんなに遠くにいても、

必ずパパが蒼馬に危険を知らせるから。

例えば…蒼馬へ、この子には気をつけろ!

って夢にして伝えるとかどうかな?」







蒼馬「それ、僕が寝てないと無理だね。」






父「あはは。そうだな。まあ大丈夫さ、

そんな事はないだろうから。それに

あの子は更生していると思うぞ。」






蒼馬「そうだといいけど…。」





蒼馬は母の何気ない言葉から

父との会話を思い出していた。




この時頭を撫でてくれた記憶が

未だに色褪せず、残っている。





物思いにふけながら、母が差し出した

コーラを飲み、炭酸の刺激と共に

ハッと我に返る。






あの夢……





まさか夢裡駅で見た夢って


父さんが…?





いやそんな訳ない。



それにあんな可愛い子が…



葛藤する蒼馬の頭に、あの時の

記事がよぎる。




取材に応えた人達が、口を揃えて

少女を可愛い子だと言っていること。



そして、

左手首を隠していたという点。





緋心に初めて会った時、

彼女の左手首にはべっ甲の腕時計が

付けられていたことを思い出す。





蒼馬は炒飯とスープを掻き込み、


慌てて食器を流し台に運びながら

「ごちそうさま!」と叫び



2階へ駆け上がって行った。





そんな蒼馬の背中を、母は

不思議そうな顔で見つめた。






蒼馬は自室のパソコンを開き、


【小学生 女児 父親 殺害 現在】で

検索した。




検索結果には事件の経緯が

詳細に書かれたページが沢山出た。



なかには少女のファンクラブを名乗る

ホームページもあった。


覗いてみると掲示板になっていて、

それぞれがページを作って交流している。




個人情報が一切流出していないため、

誰も少女の名前を知らない。



彼らは彼女を悪に立ち向かった

勇敢な姫という意味を込めて、


『勇姫』と名付けて呼んでいた。




一つのスレッドには、


父親が悪い。立派な正当防衛で

少女は悪くないという擁護の声が

多数書かれており、




もう一つのスレッドには、

美少女だという証言が多いことから

こんな感じだろうとイラストを

寄せ合う人達が集まる。




更には、

少女のようになりたい。社会に

出てきたら養ってあげたいなどと、

神格化している異様なものもあった。



そのスレッドの2ヶ月前の投稿に

蒼馬は目を疑った。





『勇姫ちゃん、3月に施設を出たらしい。

春から高校生だね。制服姿見たいな。』






この情報が事実であれば、


緋心が少女と同一人物の

可能性は十分にある。



とても偶然とは思えないほど

緋心と少女の特徴が重なっていき、


蒼馬は怖気を震う。




あんなに可愛いと思っていたのに、


今では緋心に会うのが怖い。





ただ、まだ緋心が少女だという

確証はない。



仮に緋心が少女だったとしても、


あの時父さんが言っていたように

更生しているかもしれない。



何より正当防衛なのだから、

もう誰も傷つけようがないだろう。





そう自分を言い聞かせ、

そっとパソコンを閉じた。

















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