第10話 ビニ本
「あんたも好きねー」
「感謝する、えへへへ」
俺は先遣隊のリーダー、スカーフェイスのケンドー隊長にこっそりビニ本を何冊か手渡した。
先遣隊の男女比は25対5と
そこでアポーツ持ちの俺に相談が持ちかけられたのだ。この際ツノがなくてもいいから異世界のエロい春画はないものかと。
まかせなさい!
自慢の脳内コレクションを披露する時が来ようとは夢にも思わんかった。夢の中だけど。
あの頃はビニール越しに中身を透視したもんだ。ほとんどハズレたけど、たまに大当たりを引いた時はもう歓喜よ。
「このままでは禍獣の被害より大ごとになるところだった」
「お安い御用ですよ」
「しかし異世界の春画は過激で美しいな」
鼻血が出てますよ隊長。
そりゃもう穴を穴があくほど凝視している。
穴は最初からあいてるんだけどガン見して破れたわけではなく穴というのは二つの山と穴のセットで山のアナアナ、何いってんだ俺。
どうやら白黒写真は存在するらしいが鮮やかなカラーと印刷技術はないようだ。
こりゃ異世界での収入源確保か。
「ここでは大丈夫だが都や他所では見せるなよ。下手すると首が飛ぶぞ」
悪だくみを察したのかケンドー隊長に警告された。
ですよねー。そううまい話があるわけなかった。社会秩序や風紀を守るのは常識だ。
公序良俗は大事。
先遣隊の宿所にケンドーが戻るとケダモノのような「ウォーッ!」という野郎どもの歓喜の咆哮があがった。
そう、ここは目的の開拓拠点だ。
ようやく開拓地に着いた俺は拠点の宿営地に圧倒された。
それは壮大な建造物群であった。
ダイから遺跡があるとは聞いていたがこれはアンコール・トムとかアンコール・ワットレベルだった。
堀と城郭に囲まれた遺跡は手を加えずとも要塞として機能するほど完成され荒廃も少ない。
それが打ち捨てられていたのだ。
元の世界にもマチュピチュをはじめとする南米の遺跡群やらペトラ遺跡、カッパドキアなんてあるから不思議ではないのだがなんとももったいないことだ。
伝承では王家で飼育していた禍獣が暴れて滅んだといわれている。昔話で似たようなのを聞いたことがある。
めちゃくちゃ栄えた国の王様が
「なんの騒ぎ?」
声をかけてきたのは噂のアグネス姉さん。
俺からすると若い頃のブリジット・バルド◯似のお嬢さんだ。
ちゃんとビキニアーマーを着用しているあたり需要に応えていてよろしい。
鬼娘といえばビキニだよね。
「ちょっと異世界の差し入れを……」
「ふーん」
なにかを察したのか深くは追求されなかった。
「遺跡の案内をするわ。そのあと歓迎会よ。ついて来て」
わざわざ呼びに来てくれたらしい。
細いウエストを追いかける。あれでまともに戦えるのかね。電撃があるからいいのか。
「ここが見張り台」
上まで登ると所々植物に侵略された遺跡が見渡せた。でも膝にきてます。もう足が上がりません。
見張り番の若者が憐れんだ眼差しを向けるが見栄を張る余裕もないわ。
先遣隊はいわゆる屯田兵でこのまま住み着いて農業などをすることになっているそうだ。
アメリカの西部開拓時代は男が圧倒的に多かったと聞くがここはこのあと女性が増えるのかね。増えなきゃ一生
俺は若者に憐れみの眼差しを返してやった。
「あっちが住居予定地域でこっちが倉庫。まだ中は空っぽだけどね。あの林は昔は庭園で泉が湧いているわ」
せっせと子供たちが水汲みして食事の準備をしているのが見えた。今夜は歓迎会だ。またカットベアかな。カットベアの肉はA5ランクの和牛にもひけをとらない味で喜ばれていた。脂の質がいいんだよな。
指さしていたアグネスさんの指先がいきなりスパークした。
青白い閃光と鼓膜が破れそうな破裂音でひっくり返りそうになったぞ。おっかねえ。
「チイバット、スカベンジャーだけどカットベアの肉を狙ってきたみたい」
コウモリのような黒い羽根が煙の尾をひいて落ちていった。
「ここをねぐらにしていた禍獣は退治したけど建物の外では用心してね。まだまだ厄介なのがいるから。」
「わかった」
「おい! あれを見ろ!」
若者が緊迫した声とともに警鐘を鳴らした。
遺跡を取り囲む木立からぞろぞろと四つ足の禍獣が現れた。
「グレーウルフの群れだー!」
アグネスが叫んで飛び降りるように駆け下りていく。
俺は落っこちないように階段を下る。
手すり欲しいよなー。
どっかから補助金出ないもんかね。
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