第3話

 しばらく待っていると広い場所に通された。目の前には玉座らしきものが。

「あれ、さっきの人間じゃん」

「え、ゼウス様⁉」

ヘルメス様ってゼウス様の息子だったの⁉

「知り合いだったんですね。良かったです。えーと、君、紹介するよ。こちらが長男のアレス」

「どうも」

「で、次男のアポロン」

「よろしく」

「こっちが四男のディオニュソス」

「よっ」

「んで、この座ってる偉そうな奴がゼウス。お父様だよ」

「偉そうな奴ってなんだよ」

「その隣がヘラ。お母様だよ。血は繋がってないけど」

「ふん」

一通り紹介されると、俺は名前を聞かれた。

「鋼牙です」

「コーガね。よろしく、コーガ」

「はい、よろしくお願いします」


 侍従の生活は厳しかった。ゼウス様は機嫌が悪いと俺たちに当たるし、アポロン様は食事など全て俺たちに任せるし(自分では絶対にやらない)、ヘルメス様に用があってもいつもいないし、ディオニュソス様は「酒を持ってこい!」と自室で酔っぱらって倒れるし、新人いびりはひどいし、トイレは臭いし、寝床は狭い。嫌なことだらけじゃないか! もはや奴隷だろ、こんなの!

「あ、コーガく~ん。今日も用事があるから。ばいばい」

「え、ちょ、今日もですか⁉」

「ぼくは忙しいんだよ。じゃ、よろしく」

ええ~……。あの中で一番まともなのはこの人なのに。ヘルメス様が行ってしまうとさて、新人いびりが始まります、と。

「おい、コーガ。さっさとこの荷物を運べよ」

「あ、はい。分かりました」

俺は大きな箱を持って地下室に向かう。重い。何が入ってるんだ、コレ?

「おい、コーガ。それが終わったらトイレ掃除と庭掃除をしろ。窓ふきも忘れるな」

「分かりました!」

と、笑顔で言いつつ心の中で悪態をつく。自分でやれよ!

「ほら、さっさと運べ!」

「痛っ……」

突き飛ばされた。荷物が壊れたらどうするんだよ⁉ それこそゼウス様に怒られるぞ! 一つ文句でも言ってやろうかと振り返ると

「は、ぇ……ゼ、ゼウス様……⁉」

い、いつの間に⁉ ど、どどどうしてゼウス様が俺の後ろにいるんだ⁉

「何やってんの? さっきからうるさくて眠れないんだけど」

あ、心配はそこですか? 俺の心配じゃなくて? 本当に神様って自分勝手だよなあ。

「申し訳ございません、ゼウス様。この新人が」

先輩が俺を睨む。あの、俺は悪くないよ? ゼウス様は鼻で笑った。

「ハッ。さっきから聞いてたから誤魔化しても無駄だよ。それよりも早くベッドの準備をしてくれないかな?」

先輩たちはビクビクしながら慌ててベッドの準備をしていった。

「人間って不便だよねえ。能力がなーんにも無いんだから」

ゼウス様は嘲笑するように言って去っていった。


 その日以来、新人いびりは消えた。誰もゼウス様には逆らえないもんね。うんうん。ゼウス様に初めて感謝した。

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