第7話 大敵へと挑むは骨の騎馬?
「……ふむ。絶望に濡れた瞳。必死に生を求める足掻き。
ああ、実に美しい。 とても見ごたえのある景色だ」
目の前を、一人の少女が駆け抜けていく。
『姫』と呼ばれたその少女は、泥と涙に塗れ、己の無力さを噛み締めながら、死の淵から逃れようと必死に脚を動かしていた。
その後方、広間の奥からは、地を揺らすグレイヴ・タイタンの咆哮が、彼女の背中を、そして未来を食い破らんと迫っている。
「助けて……誰か、助けて……!」
助けを乞うその声は、虚空に消える。
くくっそろそろ頃合いか。
颯爽と私は彼女の前へと姿を現す。
「なに!? 見た事のないモンスター……」
「ククク、麗しき姫君よ、お目にかかれて実に光栄である」
「うそ? モンスターが言葉を!?」
ほう……どうやら、モンスターと定義される者はこの世界ではしゃべらないらしい。
「驚いて頂いて何よりだ。
さて、姫君。 私から一つ提案があるのだが、聞いて貰えるか?」
「提案……モンスターから? 何でもいいわ! 私達を助けて!」
おや? この姫君は私をモンスターと定義したうえで、協力してもらえると思っているのか。
実に愉快だ。
「ククク、それは出来ない相談だ。
何故なら、私の提案とは、姫君が今死ぬか、後で死ぬかのどちらにするのかと言う事だからだ。
君の従者であろう少女が、主の目の前で抗う事すら許されず、叩き潰される所を見て見たいと思ったのでね」
ただでさえ、顔色の悪かった少女の顔が、更に絶望の色へと染まっていく。
フフッこれは堪らない。
無垢な少女の絶望がこれ程、甘美なものだとはな……ククク。
「うそ……そんなに可愛くて綺麗な姿をしているのに、性格が悪魔だなんて!」
「可愛いだと? そんな馬鹿げた事があってはならない。
私は磨き上げた象牙の如く、乳白色で神々しいスケルトンなのだ。
嘘偽りを吐き捨て、私の動揺でも誘っているのか小娘?」
「嘘じゃないもん!
綺麗なピンク色で可愛い感じの……スケルトンなの!?」
「ピンク色……だとぉ……!?」
心当たりはある。
何しろ私は鯛のスケルトンであるのだから。
なるほど、進化した時にシールド・スケイルが皮となっていたのか。
「まあいい。 私を美しいと告げた事だけは褒めてやろう。
少しいい気分だ。 先程の願いを叶えてやる。
姫君よ、騎馬の心得はあるか?」
少女が困惑した表情を見せる。
しかし、覚悟を決めた瞳が私を捉えた。
「乗馬はやった事はないけど、なんとかしてみせる!」
「悪くない心意気だ。 ならば私に騎乗するがいい。
私は、騎乗した者のあらゆる能力を高める力がある」
少女が跨ると、何やら急にやる気が湧いて来る。
なるほど、これが騎馬の気持ちか。
興が乗って来たぞ……。
「フハハハ! 私を手放そうとしない限り、姫君は振り落とされる事はない!
しかし、気をつけろよ? 私は馬の様に大人しくはないのだからな」
「わかった! 必ずあなたを乗りこなして見せる!」
そうして、私は少女を乗せ、強敵であるグレイヴ・タイタンの元へと全速力で泳ぎ出した。
転生したらまな板の上の鯛だった件 ジャガドン @romio-hamanasu
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