第5話 不毛なる研鑽

「……ふむ。十、か。いや、十一か」


 私の背後には、もはや物言わぬ骨の破片が、砂利のように積み重なっていた。

 かつては私に敗北を与えた人型のスケルトンたち。

 だが、今の私にとって、彼らは熟しきった果実を収穫するのと同義であった。


「同胞を食らうことに、痛みを感じるか?  

 ……クク、愚問だったな。

 鯛のスケルトンである、私の何処に痛覚を感じる神経があると言うのか?」


 私は空中を泳ぎ、階層をさらに深くへと潜る。  

 そこには、より精強な個体――重厚な大盾を持った者、あるいは複数の腕を持つ異形のスケルトンが跋扈していた。  

 だが、そのどれもが、今の私の『機働力』の前では鈍重な骨に過ぎない。


 私はあえて大盾の正面から突っ込み、激突の寸前で【シールド・スケイル】を振動させ、接触面を砕く。  

 怯んだ隙に、発達した尾骨を鞭のようにしならせ、相手の首を捥ぎ取った。


「ハハハ! 脆い、あまりにも脆いぞ!  

 これが、貴様等の限界だというのか?   ならば私が教えてやろう。

 真なる死とは、ただ朽ちることではなく、他者の糧となり、その意志の礎となることだ」


 私は休むことなく、さらなる『食材』を求めた。  

 骨を噛み砕くたびに、私の意識の中に蓄積される魔力が、臨界点を超えようとしている。  

 視界の端で、システムが再び非情な、そして甘美な宣告を告げた。


【レベルが20に到達しました】

【種族:スケルトン・ソルジャーから、さらなる進化が可能です】


「……ふむ。思っていたよりも早かったな。  

 スライムというスープを啜り、スケルトンという硬肉を食した結果が、これか」


 提示された進化先を、私は冷徹に吟味する。


【スケルトン・ナイト】

【シャドウソルジャー】

【ボーン・ブレード・フィッシュ】


「なるほど……もう、騙されんぞと言いたい所だが……。

 フフッようやく決定的なワードが出たな。

 迷う事など何もない! スケルトン・ナイトだ! 私は騎士の体を手に入れる!」


 私は、人の体を取り戻す為、迷わず魂を刻みつけた。


「さあ、見せてみよ。  

 この魚類の骨格から抜け出した、本物の骨格を!」

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