第4話 骨の兵装

「……熱いな。魂が、この貧相な骨格という器から溢れ出そうとしている」


 進化の光が『私』を包み込む。

 私は願った。さらなる強固な骨を。理不尽を噛み砕く、絶対的な『暴力の形』を。

 視界が白濁し、意識の髄までが組み変わるような激痛が走る。

 だが、その痛みすら今の私には福音であった。


 光が収まり、私は己の肢体を確認する。  

 これでようやく、期待していた『人型』への変貌は……なかった。


「ふふっ……。なるほど、世界は私に、この姿で戦えと命じるか」


 そこにいたのは、人型の兵士などではない。  

 中骨を軸に、全身を覆うのは『うろこ状の骨の鎧』。

 剥がされた鱗の代わりに、硬質な骨が重なり合い、私を全方位から守護している。

 さらに、ヒレの骨は鋭利なカトラスのように進化し、触れるものすべてを断ち切る武装と化していた。


【種族:スケルトン・ソルジャー】

【特性:ボーン・スラッシュ(骨刃乱舞)】

【特性:シールド・スケイル(硬質骨鱗)】


「腕がないのなら、ヒレを刃とすればいい。

 足がないのなら、空を泳ぎ、質量を武器とすればいい。

 ……『ソルジャー』とは職能であり、形態ではないと言う事か」


 私は、かつて私を退けたあの人型スケルトンのもとへと舞い戻った。  

 相手は、依然として緩慢な動作で、その錆びた剣を構えている。

 あまりにも稚拙で、死の舞踏とするには可憐さに欠ける。


「待たせたな、同胞よ。我が糧とする為、名も無きその魂を沈めに来てやったぞ」


 私は空中を泳ぎ、加速する。

 かつては無策に弾丸のようにぶつかることしか出来なかったが、今の私には『武器』がある。

 

 私はあえて正面から突貫し、直前で急旋回。

 相手の視界から消えると同時に、進化した胸ビレを振り抜いた。


 鋭利に発達した骨刃が、人型スケルトンの首の隙間――脊椎の接合部を完璧に捉える。  

 かつては金剛石のように硬く感じた相手だが、今の私の刃の前では、こうも容易く断ち切れるとはな。


 ――パキンッ。


 乾いた音を立てて、人型の髑髏が宙を舞う。

 私はそれを空中で受け止め、虚無の眼窩を見つめた。


「ククク、哀れだな亡者の傀儡よ。

 貴殿のその空虚な頭蓋に、私のこの『重み』が理解できるか?」


 私は空中で静止し、奪い取った髑髏を、あの中身を噛み砕いた顎で一気に咀嚼した。  

 砕ける骨の感触。染み出す濃厚な怨念と魔力の残滓。


「……フフフ、悪くない気分だ。

 スライムの核に比べれば、いくぶんか歯ごたえがある。

 まさに、滋味溢れる絶望の味だ。 ハハハ」


 髑髏を喰らい尽くし、その魔力を吸い上げる。  

 私の骨格は、さらに鈍く、不気味な輝きを増していった。  

 中落ちを削ぎ落とされたあの日の無念が、一つ、また一つと、暴力的なまでの力によって塗り替えられていく。


 さて――次は、この剣の切れ味を試すに足る、より大きな『食材』を探しに行くとしよう。

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