第6話 初めての夕焼け
僕はゆっくり立ち上がった。
膝は震えている。
それでも、一歩踏み出す。
足裏に伝わる感触は、
さっきと同じ。
でも、意味が違った。
――支えられている。
顔を上げると、
今まで見えなかった景色が広がっていた。
谷を抜ける風。
遠くの山。
流れる雲。
「……きれいだ」
思わず、そう呟いた。
前を歩く揺れる黒髪は、振り返らない。
でも、もう僕にもわかる。
そんなに気を張ってちゃ生きていけないとは、
わらわれてなどいなかった。
もっと気を抜いて生きていいんだよ、と囁いてくれていた。
わからなかった、あの頃の僕には。
落ちるかもしれない橋を前に、
ヒビが入ってるかもしれない橋の上で、
怖がらずに景色を楽しもうなんて、
最初からできるはずがなかった。
見えなかった、こんな景色には。
一度手放して、知った。
一度諦めたから、見えた。
やっとわかったから、
あの時教えてくれた夕焼けの色を見ることができた。
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