第7話 めぐり、めぐる

誰もが通り過ぎる橋の上。

ひとりぼっちでかがんだ背中に、俺は思わず声をかけた。

怯えきったその小さな背が、あの日の自分と重なった。


 

 ――……俺も昔は、同じ場所で立ち止まっていた。


しゃがみ込んで、

ヒビを探して、

下を見て、息が詰まって。


そのとき、俺の前で立ち止まった人がいた。


「怖いよね。私が先に行くから、見てて」


そう言って、彼女は先に進んだ。


 無理に引っ張らず、説得もせず。

ただ、笑って歩いて見せてくれた。

 

歌いながら先を行く彼女の歌は、いつまでも遠くに聴こえた。


姿も見えないほど、ずっと遠くの未来にいるだろう。

それでも。

今でも、彼女の歌が聴こえる気がする。


あのとき初めて、

「割れないかもしれない」という考えが、

頭じゃなく、体に入ってきた。


だから今、

しゃがみ込んでいる君を見て、つい足が止まった。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る