『拡大する領域』


南から戻って一ヶ月が過ぎた。


山は春の盛りを迎え、緑が濃くなっていた。獲物も増え、群れの食料事情は安定している。


だが、俺は立ち止まっていなかった。


「呂布、東の偵察隊が戻った」


グルドが報告に来た。


「どうだった」


「山脈の東側に、別のゴブリンの群れが三つ確認できた。規模はそれぞれ十から二十匹程度。統一されておらず、互いに争っている様子だ」


「三つの群れが、争っている……」


俺は地図を見た。


この一ヶ月、俺は偵察を繰り返し、周辺の地図を作成していた。北には人間の領域。南にはゼドの集落とゴブリンの王国。西は俺たちが来た森。そして東には——まだ未知の領域が広がっている。


「争っている群れは、弱っているはずだ」


俺は呟いた。


「争いで消耗し、数も減っている。今なら——」


「取り込めるか」


グルドが俺の考えを読んだ。


「ああ。ゴルドの時と同じだ。選択肢を与える。従うか、去るか、戦うか」


「三つの群れ全部にか」


「全部は欲張りすぎだ。まずは一つ。最も弱っている群れを狙う」


俺は立ち上がった。


「グルド、精鋭を十匹選べ。明日、東へ向かう」


---


翌日、俺たちは山脈を東へ越えた。


東側の地形は、西側とは異なっていた。岩山が連なり、谷が深く刻まれている。隠れる場所は多いが、移動は困難だ。


「偵察の報告では、最も弱っている群れはあの谷の奥にいる」


グルドが前方を指した。


深い谷が、山の間を縫うように続いている。その奥に、ゴブリンの群れがいるらしい。


「行くぞ」


俺たちは谷を進んだ。


---


谷の奥に、確かに群れがいた。


だが——


「これは……」


俺は眉をひそめた。


群れは、壊滅状態だった。


洞窟の周囲に、ゴブリンの死体が転がっている。生き残りは五、六匹。全員が傷つき、疲弊している。


「何があった」


俺は近づき、生き残りの一匹に声をかけた。


「お前たち、何があった」


生き残りのゴブリンは、虚ろな目で俺を見上げた。


「……オーク、だ」


「オーク?」


「三日前、オークの群れが来た……俺たちの群れを……襲って……」


オーク。ゴブリンとは別系統の魔物だ。体格はゴブリンより大きく、凶暴で好戦的。


「オークの群れは、どこへ行った」


「知らない……奴らは、食料と女を奪って……去っていった……」


俺は周囲を見回した。


確かに、死体の中にはオークに食い殺されたと思しきものもある。凄惨な光景だった。


「何匹だった。オークは」


「十匹……いや、もっといたかもしれない……」


十匹以上のオーク。それだけの群れが、この近くにいる。


「グルド」


「ああ」


「警戒を強めろ。オークがまだ近くにいるかもしれない」


「分かった」


グルドが仲間たちに指示を出す。


俺は、生き残りのゴブリンに視線を戻した。


「お前たち、どうする。このまま死を待つか」


生き残りが、俺を見上げた。


「……あんた、何者だ」


「俺は呂布。北の山を支配している」


「北の山……オーガがいた、あの山か」


「オーガは俺が倒した。今、あの山は俺の領域だ」


生き残りの目に、微かな光が灯った。


「……助けて、くれるのか」


「条件がある。俺の下につけ。俺の群れに加われ。そうすれば、お前たちを守る」


生き残りたちは、顔を見合わせた。


「俺たちは……もう、戦う力がない……」


「分かっている。だから、守る。鍛える。お前たちが戦えるようになるまで」


沈黙が流れた。


やがて、生き残りの一匹が——リーダー格らしい——膝をついた。


「……分かった。従う。どうせ、このままでは死ぬだけだ」


他の者たちも、次々と膝をついた。


「よし。では、俺の群れへようこそ」


俺は手を差し出した。


---


生き残りは六匹だった。全員が傷つき、衰弱している。


「まずは山へ連れ帰る。治療が必要だ」


俺は判断した。


「だが、呂布。オークの群れが気になる」


グルドが言った。


「ああ。俺も気になっている」


十匹以上のオーク。放置すれば、いずれ俺たちの領域にも侵入してくるかもしれない。


「まずは情報を集める。オークの群れがどこにいるか、突き止める必要がある」


「偵察を出すか」


「ああ。だが、今日は帰る。この六匹を安全な場所へ運ぶのが先だ」


俺たちは、生き残りを連れて山へ戻った。


---


山に戻り、六匹を治療した。


傷は深いが、命に別状はない。数日休めば、動けるようになるだろう。


「呂布」


ゴルドが報告に来た。


「東の偵察隊を二組出した。オークの群れの居場所を探っている」


「ありがとう。結果が出たら、すぐに知らせてくれ」


「ああ」


ゴルドが去った後、俺は洞窟の入口に座り、考え込んだ。


オークの群れ。十匹以上。


今の俺たちの戦力は、三十匹を超えている。数では勝っている。だが、オークは一匹一匹がゴブリンより強い。単純な数の比較では測れない。


「どう戦うか……」


俺は地図を見つめながら、策を練り始めた。


---


三日後、偵察隊が戻った。


「見つけた。オークの群れは、東の谷のさらに奥にいる」


「数は」


「確認できたのは十二匹。だが、もっといるかもしれない」


「拠点は」


「大きな洞窟を使っている。周囲は開けていて、奇襲は難しい」


俺は眉をひそめた。


奇襲が難しい。正面から戦えば、被害が大きくなる。


「他に何か気づいたことは」


「一つある。オークたちは、毎日狩りに出ている。三匹から四匹の小隊で、別々の方向へ散っていく」


「散っていく……」


俺の目が光った。


「つまり、日中は拠点に残っているオークは少ないということか」


「そうだ。俺たちが見た時は、拠点には五、六匹しかいなかった」


「それだ」


俺は立ち上がった。


「狩りに出た小隊を、一つずつ潰す。数を減らしてから、拠点を叩く」


「ゲリラ戦か」


グルドが言った。


「ああ。オーガの時と同じだ。一匹ずつ孤立させて倒す」


俺は仲間たちを見回した。


「準備しろ。明日から、オーク狩りを始める」


---


翌日、俺たちは東の谷へ向かった。


精鋭十五匹。俺、グルド、ゴルド、ゴリ——全員がホブゴブリンか、それに近いレベルの成体だ。


「まず、オークの狩猟ルートを把握する」


俺は指示を出した。


「三組に分かれて、別々の方向から監視しろ。オークの小隊を見つけたら、追わずに報告だけしろ」


「了解」


三組が散っていった。


俺は高台に登り、周囲を俯瞰した。


谷は複雑に入り組んでいる。隠れる場所は多い。待ち伏せには向いている。


「ここだな」


俺は一つの場所に目をつけた。


狭い峡谷。両側を崖に挟まれ、逃げ場がない。オークをここへ誘い込めれば——


「呂布」


ピックが戻ってきた。


「オークの小隊を見つけた。四匹。北の方角へ向かっている」


「北か。こちらへ来るか」


「分からない。だが、このままいけば、あの峡谷の近くを通る」


「よし」


俺は立ち上がった。


「全員に伝えろ。峡谷で待ち伏せる。オークが来たら、挟み撃ちにする」


---


待ち伏せは、成功した。


四匹のオークが峡谷に入った瞬間、俺たちは両側から襲いかかった。


「今だ! かかれ!」


俺の号令で、石と矢が降り注いだ。オークたちが悲鳴を上げる。


「グガッ! 敵襲だ!」


オークたちは武器を構えたが、遅かった。狭い峡谷では、彼らの体格が仇になる。身動きが取れず、俺たちの攻撃を避けられない。


俺は崖から飛び降り、剣を振るった。


一匹目の首を斬り、二匹目の胸を突く。グルドとゴルドが残りの二匹に襲いかかり、あっという間に仕留めた。


「終わったか」


俺は剣の血を払った。


「ああ。四匹、全滅だ」


グルドが報告した。


「よし。死体を隠せ。まだ気づかれるわけにはいかない」


俺たちは死体を谷の奥へ運び、岩の下に隠した。


「次の小隊を狙う。同じ手で、一組ずつ潰していく」


---


三日間で、俺たちは三つの小隊を壊滅させた。


合計十一匹のオーク。残りは五、六匹のはずだ。


「そろそろ、気づかれている頃だな」


俺は言った。


「狩りに出た仲間が戻らない。オークたちは警戒を強めているはずだ」


「どうする。このまま待ち伏せを続けるか」


「いや。攻める」


俺は仲間たちを見回した。


「残りは五、六匹。今の俺たちなら、正面から戦っても勝てる。拠点を叩く」


「了解」


俺たちは、オークの拠点へ向かった。


---


拠点は、大きな洞窟だった。


入口の前に、オークが二匹立っている。見張りだ。彼らの顔には、不安と警戒の色が浮かんでいた。


「仲間が戻らない……どうなっている……」


「分からない。だが、何かがおかしい……」


俺たちは、岩陰から彼らを観察していた。


「ピック、あの二匹を射れるか」


「この距離なら、いける」


「よし。合図をしたら、射ろ。グルド、ゴルド、俺と一緒に突入する」


「了解」


俺は深呼吸した。


そして——


「今だ!」


ピックの矢が、見張りの一匹の喉を貫いた。もう一匹が振り向いた瞬間、俺たちは突撃した。


「敵襲——グガッ!」


二匹目の見張りを、グルドが斬り伏せた。


俺たちは洞窟に突入した。


中には、四匹のオークがいた。全員が武器を手に、俺たちを迎え撃とうとしている。


「来たか、ゴブリンども!」


リーダー格のオークが、巨大な棍棒を振り上げた。


「お前らが、俺の仲間を殺したのか!」


「ああ。そして、お前たちも殺す」


俺は剣を構えた。


「かかれ!」


---


戦闘は、激しかった。


オークは強い。一匹一匹がゴブリンの成体より力がある。だが、俺たちには連携があった。


「グルド、左!」


「分かってる!」


グルドが左のオークを抑え、俺は正面のリーダーに斬りかかった。


「グオオオッ!」


リーダーが棍棒を振り下ろす。俺は横に跳んで避け、剣で腕を斬りつけた。


「グッ……!」


血が噴き出す。だが、致命傷ではない。オークの肉体は頑丈だ。


「死ねえ!」


リーダーが再び棍棒を振る。俺は後ろに跳んで避けた。


「ゴルド!」


「任せろ!」


ゴルドが背後から斬りかかった。剣がリーダーの背中に食い込む。


「グアアッ!」


リーダーが振り向いた瞬間、俺は踏み込んだ。


「——終わりだ」


剣が、リーダーの喉を貫いた。


---


戦闘は、数分で終わった。


オーク六匹、全滅。


俺たちの被害は、軽傷が数匹。死者はいない。


「やったな」


グルドが息を切らせながら言った。


「ああ。やった」


俺は剣を下ろした。


オークの群れを、壊滅させた。これで、東の脅威は消えた。


「洞窟を調べろ。使えるものがあれば、持ち帰る」


「了解」


仲間たちが洞窟の奥へ入っていった。


俺は洞窟の入口に立ち、東の空を見つめた。


また一つ、領域が広がった。


---


【ステータス更新】


**【名前】呂布**

**【種族】ホブゴブリン**

**【レベル】44**


**【HP】420/420**

**【MP】160/160**


**【筋力】172**

**【敏捷】182**

**【知力】118**

**【魔力】98**

**【耐久】160**

**【幸運】55**


**【スキル】**

暗視(固有)、威圧(覚醒)、天下無双(封印)、指揮(Lv.10)【MAX】、投擲(Lv.8)【UP】、隠密(Lv.7)【UP】、危機察知(Lv.9)【UP】、窮地の逆転(Lv.4)【UP】、戦術眼(Lv.10)【MAX】、教導(Lv.9)、統率(Lv.10)【MAX】、読字(自動習得)、剣術(Lv.10)【MAX】、野営(Lv.5)【UP】、追跡(Lv.5)【UP】、火計(Lv.3)、再生(Lv.5)【UP】、鼓舞(Lv.6)【UP】、交渉(Lv.4)、威厳(Lv.6)【UP】、耐寒(Lv.2)、講義(Lv.3)、情報収集(Lv.3)【UP】、指導者の器(Lv.2)【UP】、奇襲(Lv.1)【NEW】、殲滅戦(Lv.1)【NEW】


**【称号】**

転生者、主殺し、反逆者、魔狼討伐者、群れの長、人殺し、鬼狩り、育成者、山の王、越冬者、外交者、師、オーク殺し【NEW】


---


**【スキル最大到達】統率 Lv.10(MAX)**


**効果:**群れを統べる力が極限に達した。配下の忠誠心と士気が大幅に向上。群れ全体の戦闘効率+20%。


**備考:**これ以上の成長には、より高位のスキルへの進化が必要。


---


**【スキル最大到達】剣術 Lv.10(MAX)**


**効果:**剣の技が極限に達した。剣を用いた攻撃力と命中率が大幅に上昇。剣技の精度と威力が最高レベルに到達。


**備考:**これ以上の成長には、より高位のスキルへの進化が必要。


---


**【新規スキル】奇襲 Lv.1**


**種別:**戦術スキル


**効果:**奇襲攻撃の成功率と威力が向上。敵に気づかれずに接近する能力が上昇。


**成長条件:**奇襲を成功させ、敵を撃破すること。


**備考:**不意を突く者は、戦いを制する。


---


**【新規スキル】殲滅戦 Lv.1**


**種別:**戦術スキル


**効果:**敵勢力を完全に壊滅させる戦闘における効率が向上。逃走する敵を追撃する能力が上昇。


**成長条件:**敵勢力を殲滅すること。


**備考:**容赦なき戦いの証。


---


**【新規称号】オーク殺し**


**効果:**オーク系魔物に対する攻撃力+10%。オーク系魔物からの威圧に対する耐性を獲得。


**取得条件:**オークを十体以上討伐すること。


**備考:**緑の獣を狩る者。


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