ICE
あいつが大統領に再選されるとは思わなかった。第22・24代グロバー・クリーブランド以来の返り咲き、不連続二期当選大統領。だけど、まあそんなことはいい。それは民主的に定められたルールに基づいたことには違いなかったからだ。しかし。
2026年、冬。アメリカは荒れている。今度は雪ではない。氷、だ。アイス、と通称される連中。移民やら関税やらを取り締まるための強大な権限と、そして法外な執行予算を与えられた、事実上の、現大統領派の私兵集団。
「この国はどうなってしまうんだろうな」
と呟いてみる。マートからの帰りである。アイスクリームを抱えている。と、突然、官憲らしき連中に周囲を囲まれた。
「フリーズ」
そして銃を突きつけられる。
「不法移民か?」
と問われる。誰が不法移民なものか。僕は確かに白人ではないが、もう何十年も前からこの合衆国に暮らしている、れっきとしたこの国の市民だぞ。
「連行する。来てもらおう」
無茶苦茶を言う連中だ、と思う。僕が何をしたというのだ。市民の権利は。法のもとの自由はどうなった? 僕は抗弁する。僕には権利があると、そう言った。
「なら教えてやる。俺たちアイスに逆らうってことが何を意味するかをだ」
やばい。これは本当に撃たれる。そう思ったときだった。石が飛んできた。向こうから。顔だけ向けてそっちを見る。そこにいたのは、ベンおじさんだった。いや、僕ももういい年になっているし、『ベンおじさん』なんて呼び方をする年ではないし、そもそもあのミックスベリーパイの一件以後、そんなに言うほど密な付き合いがあったわけでもない。でも、確かに今石を投げたのはベンおじさんだった。男たちは発砲した。ベンおじさんがくずおれる。僕は奴らの戒めを逃れ、そっちに向かって走る。
「ベン! ベン、なんて無茶なことを! なんでこんなことを……!」
「はっ」
ベンおじさんはこう言った。
「だってな。わしらは、ミックスベリーパイを作った仲じゃないか……」
やがて周囲の家々から人が出てきて、救急車もやってきた。ベンは運ばれていって、そして病院で死亡が確認された。
「そうだね。ミックスベリーパイを作った仲、だったね。僕たちは」
僕はそう言って。自分で焼いてきたミックスベリーパイに、アイスクリームを載せ。彼の墓に供えた。
Snowmageddon きょうじゅ @Fake_Proffesor
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