Snowmageddon
きょうじゅ
記憶
ドミノ・ピザから電話がかかってきて、数日前から入れていたピザの予約をキャンセルされた。
「本日天候不順のため、営業いたしかねます。お客様には大変ご迷惑をおかけいたしますが……」
あとでピザ一枚分の無料サービス券を特別にプレゼントしてくれるそうだが、腹が減っているのは今日の今であり、そのようなものが未来に予定されても当今の問題の解決にはならない。家の外に出てみた。隣の家のおじさんも家の前で嘆いている。頭の上に雪を積もらせながら。
「なんて天気だ。これじゃショッピングモールまで買い物に行くこともできやしない。Rats!(くそっ!)」
わが祖国、アメリカ合衆国は広い。30センチ雪が降っても平常営業を続けられるエリアもあれば、まったくその逆で、ごくまれに3センチ雪が積もったら社会が壊滅し、やれスノーマゲドンだスノーカリプスだ怪獣スノージラの出現だ、という騒ぎになる場所もあるのである。我々の住んでいる土地みたいに。
「やあ、お隣のベンおじさん」
「Hi(やあ)、ジョー。今日のランチは済ませたのかね」
「ドミノ・ピザが来れないって電話してきて、さっぱりさ」
「うちも似たようなものだ。こうなったら、わしもお前さんも一蓮托生じゃないか。なあ、いま家に何が置いてある?」
「うーん。イチゴがちょっとだけある。あと冷凍庫にブルーベリーがあったかな。そんだけ。それで雪が解けるまで粘ろうかと思ってたところだけど」
「それは朗報だ。うちには冷凍のパイシートがある。庭にはラズベリーが育ててある。それだけでは困るが、持ち寄って足して合わせれば、ミックス・ベリー・パイが作れるぞ」
「ミックス・ベリー・パイか。そいつぁいいね。ママンの味だ。こんな日には最高だね」
そういうわけで、雪に閉ざされて困った者同士、男ふたりしてミックスベリーパイを作ることになった。まずはパイ生地をフリーザーから出して、柔らかくする。そうしている間に、フィリングの準備。といっても、ラズベリーを庭から摘んで洗って、雑にイチゴとブルーベリーと一緒に混ぜて、砂糖をまぶすくらいのものだが。
「あとはパイ生地を格子状にかぶせてだ。オーブンに入れて、焼く。いい色になったら出来上がりだ」
オーブンレンジはベンおじさんの家にあるものを使った。そうまで凝った道具の揃った台所ではないし、本人が言うには普段電子レンジ機能以外の用途に使うことなど滅多にないそうだが、使えば使える。そうしたものである。そして、チーンと音がする。
「よーし、焼き上がったぞ」
素朴な仕上がりのミックスベリーパイを、それぞれの皿に切り分ける。ベンおじさんはこう言った。
「あと理想をいえば、上にアイスクリームを載せて喰えれば完璧なんだがな」
それは無いものねだりというものであった。現状が現状なので、近所のマートに行くのも無理だ。コンビニエンス・ストアとかもだ。
「まあいい。食おうじゃないか。温かいうちに」
「そうだね」
そういうわけで、二人でミックスベリーパイを食べた。二人とも健啖であったし、そもそもフリーザーに入っていたパイシートの量には限りがあったし、パイはすべてその場でなくなった。
「そんな機会は二度とないかもしれんが。もし、また二人でこんなことをする事態にまた、巻き込まれたら。今度はぜひ、仕上げにバニラ・アイスを載せたミックスベリーパイを、二人で食おうじゃないか。なあ、ジョー」
「そうだね、ベンおじさん。じゃあ御馳走さまでした」
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