第三話 第二の供物:暖かい手

味がしなくなってから数日。

悪いことばかりではなかった。

他のことに集中できるようになったのですから、

例えば廊下の柱から見ているあの娘、

扉の向こうでする不自然な足音。

美雨妃様を狙う醜い者たちに気づきやすくなった。

さあ、今度はどんな方法を使うのかしら、

私にどんなお守りする機会をくれるのかしら、

にこにこ笑いながら美雨妃様の隣を歩いていると

「嬉しいことでもあったの?」

不思議そうに美雨妃様が聞いてきた。

「はい、とても、」

「そう、なら良かった」

そう言いながら美雨妃様は私の頭を撫でた。

暖かい、

「どうされたのですか?」

「いつもありがとう、玲玲」

ああ、私をお近くにおいてくれるのに

貴方様の暖かさまで分けてくれるというのが、

なんてお優しい方なのだろう、

「どういたしまして、美雨妃様」

こんな方に仕えられて私は幸せ者だ。

美雨妃様を自室まで送り届け

届いていた衣の整理をする。

衣に触れると痛みを感じた。

神様、神様

来ました、次はこの毒です。

そう心のなかで唱えると

神様はやってきてくれた。

「神様、今度は衣に毒を塗ってきました。」

「この運命を回避させてください」

「ほう、お前は次に何を差し出す?」

「『触覚』なんてどうでしょう?」

「本当にいいのだな、」

「先ほどお前が感じた主の手の暖かさはもう二度と感じられなくなるぞ、」

「構いません、私はあの暖かさを優しさを忘れることなどありませんから!」

「……お前やはり少しおかしいな」

光りに包まれ真っ暗になった。

次目を覚ました時また衣に触れたのに痛みがない。

柔らかな衣の感触までなかった。

毒を落とすのに痛みがないのは好都合だが、美雨妃様が身につけるものに私の汚い血をつけないようにしなければ、

衣から毒を落とし整える。

作業が終わると

なぜか、怯えた顔をして一人の侍女が私に話しかけてきた。

「玲玲姉様その手…」

どうやら血を拭いきれていなかったみたいだ。

「あら、血が落としきれて居なかったみたい」

「美雨妃様に触れる前でよかった」

「教えてくれてありがとう、」

私が毒を処理したところをみていたであろう視線に気づきながら私は教えてくれた侍女にお礼を言った。 

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