第2話 見えない傷と向き合う時

 斉藤小雪が両親に連れて行かれたのは、街外れにある、コンクリート打ちっぱなしのモダンな作りのメンタルクリニックだった。待合室は白と淡いブルーで統一され、どこか人工的な無機質さが漂っている。他の患者の視線が気になり、彼は常に母親の影に隠れるように座っていた。

 数回にわたる面談と、無数のパズルのような図形を使った検査、そして終わりの見えない質問票への記入。その過程は、まるで彼の内側を透明にして、誰にも見られたくない思考の隅々まで解剖されるような感覚だった。

「検査の結果、斉藤小雪くんは、広汎性発達障害、特に自閉症スペクトラム障害の傾向が見られます」

 母親は、医師の言葉に全く反応できなかった。彼女の顔色はみるみるうちに青ざめ、父親は握りしめた拳を震わせていた。

「息子は治るのでしょうか」

「治る、ということはありません。この特性と、どう向き合い、どう生きていくか、環境の調整が必要です」

 医師の冷静で事実に基づいた説明は、小雪の両親にとっては、残酷な宣告だった。

 母親はその場に泣き崩れて、その背を涙を溜めた父親が励ますようにさすっている。

 小雪は、その場で、自分を『普通』にしてくれる治療法が存在しないという事実を理解した。そして、何よりも、自分の存在が両親を泣かせているという、取り返しのつかない罪悪感だけを胸に刻み付けた。

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