第3話
その日は、耳が痛くなるような警報の音から始まりました。
激しい揺れが人々を襲い壁が軋み、床がうねりました。
私は走りました。
嫌な予感が、確信に変わっていたのです。
隔離区画の前で、私は“それ”を見ました。
部下が、震える手で銃を構えていたのです。
「やめろ!」
部下は振り向き、叫びました。
「こいつの災害のせいで!
俺の家族が死んだんだ!」
少女は、壁に追い詰められ苦しそうに泣きそうな声で呟きました。
「そんなの、知らない……やめて」
空気が変わりました。皆が、心臓を握られるような気がしたと感じました。
「私は、悪いことなんかしてないでしょ……!」
角が、軋む音。
――バキン。
空が、割れました。
轟音とともに、白い光が視界を塗り潰しました。
建物全体が跳ね上がり、照明が一斉に消えました。
「落雷だ!」
「電源が――!」
「患者を離せ!」
誰かの叫び声。
何かが倒れる音。
ガラスの割れる甲高い音。
混乱の中で、少女だけが、動きませんでした。
角は、黒紫に光っていました。
雷は、空から落ちたのではなく彼女の中から噴き上がったのです。
「返して。私の人生」
再び、雷鳴が轟きます。
壁が震え、床が軋み少女は大きな声を上げました。
「怖いのに、嫌なのに、生きてたいだけなのに!」
落雷が、建物の外壁を打ち抜き、遠くで悲鳴が上がりました。
嵐は、彼女の怒りでした。
私は考えるより先に動いていていました。
拳を振り抜き、部下を殴り倒し、鈍い音が響き部下は崩れ落ちました。
私はただただ、必死に少女を抱き寄せました。
「怖かったな……もう大丈夫だ」
少女は、しばらく黙っていましたが、小さく言いました。
「先生……優しいんだね」
その言葉に、男は凍りつきました。
俺は今、自分を守るためではく、誰かを守るために動いた?
その光景は、多くの職員に見られていました。
「化け物に優しい医者」
「気味が悪い」
という噂は瞬く間に広がり、上司からの呼び出しがかかりました。
結論は、ひとつでした。
ツノの切除を、即時決定する。
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