第2話
それからというものソフィアは私の魔導器に関して並々ならぬ興味を示した。最初に見せた保温用の魔導器以外にもどんなものがあるか見てみたいとせがまれたため、私の屋敷に彼女を連れて来て今作っている魔導器について話したりもした。
学校でも私は彼女とよく話すようになった、授業で分からないことがあったらお互いに教えあったりしたり、お昼をあの始めて会った場所で一緒に食べたりと学友としてお互いの距離は縮まっていった。
だけど王族ともあろう人間と男爵家の人間である私が仲良くしていることを快く思わない人間もいた。
*
「ふう……」
ようやく授業が終わった、私はため息をついて教科書を鞄の中に入れる。早く帰って魔導器の研究を進めたいところだった。退屈な授業を受けるよりも、今は早く家に帰って少しでもアイデアを考えたい。そうして新しいアイデアを示せばソフィアも喜んでくれるから。
「ねえ」
そんなふうに急いで帰ろうとしていた私に声がかかる。なんだろう、私は忙しいのに邪魔をしないで欲しいな。
苛立ちながら振り返るとそこには数人の人間が立っていた、同じクラスの人間であることだけは覚えているくらいの関係だけど。
「あなた、最近ソフィア様と仲良くしているわね」
「ええ、それに何か問題でもありますか」
私はなるべく感情を込めず、淡々と返す。相手はどうやらそれが気に食わなかったらしい。
「ちっ……ムカつくわね。最近あの方と仲がいいからって調子に乗ってるんじゃない?」
相手の言葉に私は思わず吹き出してしまいそうになった。どうやら彼女達は私がソフィアと仲良くして彼女に取り入ろうとしていると思っているらしい。
「……あなた、今わたしを馬鹿にしましたわね」
私の態度を見て相手はさらに怒りを増す、どうやら気持ちが伝わってしまったみたいだ。
「いえ、そんなことは。ただ迷惑な人だなとは思いましたよ、ありもしない理由で人に突っかかってくるんですから」
「この……!」
私の言葉に相手はついに激昂して手を振り上げる。私を叩くつもりだろう、振り上げられた手はなんのためらいもなく私目がけて振り落とされた。
しかしその手が私に届くことはなかった、誰かがその腕を掴んで止めていたからだ。その手を止めたのは美しい金髪の持ち主――ソフィアだった。
「ソフィア様……なぜここに……!」
私に手を出そうとしていた令嬢はBの姿を見て狼狽した声をあげる。彼女がいると思っていなかったのか、かなりの慌てようだった。
「なぜここにって……単純に彼女に会いに来ただけよ。とんでもない現場に遭遇しちゃったけど」
「これは……その……」
「どんな理由があっても学校内での暴力行為は問題になるわ、このまま私が報告すればあなたの家もただでは済まないでしょうね」
「!? ど、どうかそれだけは……」
「分かったのならこの場から去りなさい、そして今後彼女には手出ししないこと、いいわね」
感情を込めずに告げられた言葉に私に危害を加えようとした令嬢達は黙って頷き、そそくさと去っていった。
「はあ……」
彼女達が去った後、ソフィアは大きな溜息をついた。
「大丈夫?」
「うん。おかげで助かった」
「まったく。あの手の人間にも困ったものね、私に対しての勝手な思い込みで関わりのある人間を傷つけようとするなんて」
「王族も大変なんだね」
「本当に面倒、ああいう人間」
吐き捨てるように放たれた言葉に彼女の本音が見えたような気がした。
「ともかくあなたに怪我がなくてよかったわ。ああ、そうだ」
彼女は思い出したように私に尋ねて来た。
「これから時間ある? よかったら私の屋敷で一緒に夕食でもどうかしら?」
アストリア王国戦記――王女と転生令嬢の大陸統一記 司馬波 風太郎 @ousyo
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