第3話 双子の生還
変な男の話は街の反対側まで届いていた。あたしはまだ見たことなかったけど、小汚い恰好で城に入ろうとするわ、宿屋のロビーですっ裸になろうとするわ、一言も話さないくせに品物だけはしっかり買って帰るわでここ数日は彼の話でもちきりになっている。
「イケメンだと思う?」
「いやないっしょ。てか、イケメンでもそんな奇行されたら普通にドン引きなんですけど」
「だよねー」
リーシエとアネッテもそのことばかりで浮かれているみたいだ。でもあたしはそれより、二人の弟たちが行方不明になっていることがよっぽど気がかりだった。難しい顔でうつむいてしまっていたのか、リーシエに顔を覗き込まれる。
「なによー。元気ないわねー」
「そーよ! どうしたのーイオナ。なんか悩み?」
リーシエもアネッテもあたしに元気がない時いつも励ましてくれる。あたしは思わず心に溜まったすべてを吐き出した。
「ヨルンとアランが...? イオナ、なんで早く言ってくれなかったの...」
「ごめんイオナ。うちら知らなくて...呑気なことばっか...」
二人ともが私のことを同時に抱きしめてくれる。ついに抑えきれなくなって涙があふれ出してくる。
「リーシエ、アネッテ...ありがとう...うぅ...」
体を預け、不安に押しつぶされるままに泣いた。ヨルンとアランがもう戻ってこなかったらどうしよう。そればかりが頭の中でぐるぐるしていた。リーシエが落ち着かせようと背中をさすってくれていた。けど急にそれがピタッと止まった。
「アネッテ、あれ…」
「...え、そうだよね」
リーシエとアネッテの力が抜け、あたしは顔を上げた。二人の視線を追うとそこには待ち望んだ姿があった。
「ヨルン! アラン!!」
あたしは椅子を降りて二人に駆け寄る。黒く汚れて疲れ切った顔だったが、大きなけがもなく無事な様子で心からほっとした。二人を抱き寄せ、三人で大泣きをする。ふと顔を上げると、一人の青年が穏やかな顔で立っていた。
「あなたが助けてくれたんですか...? 本当に、本当にありがとうございます...!」
青年は何も言わずただそこにいた。私たちを見守ってくれているかのようだった。私は感謝の気持ちを込めて、いつも身に着けている少し高いネックレスを彼に差し出した。それを受け取ると彼はそそくさと立ち去ってしまった。
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